海沿いの避難所、風にはためく黄色いハンカチ「目印に帰ってきて」
砂浜が目の前に広がる、石川県珠洲市の自主避難所。その広場に掲げられた黄色いハンカチが、海風にはためいている。 【写真】海風に揺れる黄色いハンカチ。周辺の建物の中には公費解体が始まった物もあるが、多くが地震で壊れたままだ=2024年7月2日午後1時41分、石川県珠洲市、林敏行撮影 同市馬緤(まつなぎ)町の市自然休養村センターでは、地震直後から地区の住民が自主避難所を開いている。今も毎晩約15人が、壊れた自宅で過ごす代わりに寝泊まりしている。 映画「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」になぞらえ、5月末に住民が制作を提案。不織布をB4サイズに切るなどして、6月5日に約70枚を広場に飾った。その後、住民やボランティアらがメッセージを書いた「ハンカチ」が増え続けている。 住民の坂秀幸さん(69)は「二次避難先などで地区を離れた人に、黄色いハンカチを目印にして帰ってきて欲しい、という願いを込めた」。 坂さんの自宅は半壊認定を受けたが、公費解体の時期はわからない。跡地に小さな家を建てる計画もあるが、先行きは見通せない。地区内で仮設住宅の建設予定はなく、全半壊した自宅の公費解体を待つ住民も多いという。 「希望する人が地元に帰れるよう、見通しを示して欲しい。避難先での生活が長くなるほど、戻りにくくなる」と話した。(林敏行)
朝日新聞社