世界各国のエネルギー政策に多大な影響を与えるAIブーム
時価総額で世界一の企業となったNVIDIAが生成AIブームの後押しを受けて破竹の勢いを続ける中、GAFAMをはじめとするビッグテック各社はできるだけ多くのGPUを確保するのに躍起になるのと同時に、旺盛な電力需要を満たすために原子力発電を含むクリーンエネルギー発電設備の確保に奔走している。また、莫大な石油収入をテクノロジー分野強化につぎ込んできた中東のサウジアラビアはそのターゲットをAIデータセンターに絞る。各国のエネルギー政策はAIブームの到来で、新たな局面を迎えている。 【写真】クリーンエネルギーとしては太陽光発電がよく知られているが、そのほかに風力発電やバイオマス、原子力なども活用されつつある ■AIデータセンター電力を確保するために原子力発電所の確保に走る米国のビッグテック NVIDIAのAI GPUの最新製品「Blackwell」は「B100」として出荷が開始されているが、2025年にはさらに性能を向上させた「B200」の出荷も予定されている。NVIDIA自身はB200のスペックについて概要しか発表していないが、一部の報道によるとGPU単体の消費電力が1000Wを超えると予想されている。
GPUのデータセンターへの実装ではGPUの駆動だけでなく、さまざまなデバイスの発熱を抑えるための冷却ファンや液体冷却装置などにも多くの電気が必要となり、将来的にはこれまでのデータセンターの10倍の電力が必要となるという予測もある。ビッグテック各社は温室効果ガスの排出規制などに配慮し、データセンターでの電力消費についてはできるだけ太陽光・風力といった再生可能エネルギー発電で賄う方向でやってきたが、生成AIブームでより多数のGPUノードを使用することとなり、電力確保の方向性に変化が表れている。ここで注目されているのが原子力発電だ。事故による放射能汚染、核廃棄物の処理など問題の多い原子力発電だが、地震国の日本とは事情が大いに異なり、米国では二酸化炭素を発生させないという意味で原子力発電は「クリーンエネルギー」として類別される。