「やっとマイナスからゼロに」西日本豪雨でミカンの木を失って…8代続く農家、再生への道のり
南海放送
西日本豪雨で土砂崩れの被害に遭い復旧が進められてきたミカン山で、今月あの日以来初めてとなるミカンの収穫作業が行われました。愛媛県宇和島市吉田町のミカン農家の6年4か月の記録です。
今月16日。宇和島市吉田町玉津地区のミカン山でボランティアを行っていたのは、香川県からやってきた大学生たちです。ミカンをイノシシから守る柵を、園地を取り囲むように取り付けていきます。学生たちの輪の中心にいるのがミカン農家、中島利昌さん(64)です。
あの日、350本の木を一瞬で失ったミカン農家
2018年7月7日の西日本豪雨。吉田町では、ミカン山を中心に2271か所で土砂崩れが発生。中島さんの園地でも、わが子同然に育ててきたミカンの木350本を一瞬にして失いました。
中島さん: 「この木ね、よくなってくれる木やったんですよ、本当に。なぁきれいにできたら東京行って、どんなお客さんに食べてもらおういうみかんなんやけど、どこの誰にも食べてもらわずに終わるんですよ。この子らは。見れば見るほど辛いです」 中島さんは吉田町で8代続くミカン農家。流されたミカンの木は長女の千佳さんが誕生したのにあわせて、中島さんが新たに苗木を植えたものでした。
長女・千佳さん: 「ちょうど、私が今年25なので、同い年の木になるので。ちょっと思い入れがありますね。ちょうど小学校への通学路があの道だったので、ちょうど山とか育っていくのを見ながら私たちも登校してたりしてたんで」 長男・圭吾さん: 「苗木ぐらいの頃から僕らも見てきたんで、かなり辛いですね」
"災害に強いミカン園地"として再生を決断
中島さんは国の補助事業を活用し、崩れた山を"災害に強いミカン園地"として再生させることを決めました。 「石段」が、排水と土留めの役割を果たすことで土砂崩れを防止。 さらに、「かご枠」を積み重ねることで安定性と耐久性の向上を図ります。
被災から2年8か月、中島さんのミカン山の復旧工事が完了しました。
そして… 中島さん: 「1年生の南柑20号(温州ミカン)の苗木です。もう本当に人間で言うと小さい赤ん坊ができるような感覚ですかね」 長さわずか30センチほどのミカンの苗木を大切に、大切に… 中島さん: 「よし、根っこ埋まったけん。残土もらおうか」 1本、1本… 中島さん: 「本当の節目ですよ、大きな節目です。玉津地区でもそう、我が家でもそうですけど後が『ミカン作りをするよ』って言うように、言ってくれるように、子どもが。しっかり育てたいですね」