ギザの大ピラミッド、4500年前の「建造日誌」が残っていた、世界最古のパピルス文書
労働の報酬
メレルはさらに、部下たちの報酬についても細かく記録をつけていた。ファラオ時代のエジプトには貨幣がなかったため、報酬は一般に穀物によって支払われていた。受け取る量は、職位によって異なっていた。また、労働者の基本的な食事は、パンや様々な肉、ナツメヤシ、はちみつ、豆類などで、それらを全てビールで流し込んでいた。 昔から、大ピラミッド建設には大量の労働力が必要だったとされてきたが、労働者の身分については議論の対象になってきた。多くの歴史家は、労働者が奴隷だったに違いないと主張してきたが、紅海文書に書かれていることはこの考えと矛盾している。メレルによる詳細な報酬記録は、ピラミッドを建造した人々が有能な労働者であり、その労働と引き換えに報酬を受け取っていたことを示している。 パピルスを読んで何よりも驚かされるのは、これがピラミッド建造を目撃しただけでなく、実際にその事業の重要な一翼を担い、日々の業務をこなす部隊を監督していた人物の手によって直接書かれたものだということだ。この発見によりエジプト学者たちは、大ピラミッド建造の最終段階を記録した詳細な(そしてやや単調な)断片を手に入れた。
文=José Miguel Parra/訳=荒井ハンナ