【東スポ杯2歳S】前走場所、距離、血統良しのクロワデュノールが優勢 相手はプレシャスデイなど
内容が問われるレース
この10年の勝ち馬で、GⅠを制したのはサトノクラウン、ワグネリアン、ニシノデイジー(中山大障害)、コントレイル、ダノンザキッド、イクイノックスの6頭。言わずと知れた出世レースだ。勝てば、翌春クラシック有力候補に推される。 【エリザベス女王杯2024 推奨馬】実績・実力・末脚はNo.1! 歴戦のGⅠ馬がクリアの条件を満たす(SPAIA) しかし、必ずしもそうではない馬もいて冷静な視点も必要になる。決着時計だけではなく、ラップ構成、位置取り、上がり3Fタイム、そして走りっぷりと多角的に分析した上で評価しないといけない。GⅠ馬多数輩出といっても、絶対ではない。これもまた競馬の面白さだ。2歳11月に東京芝1800mでインパクトを残せる馬はそうはいない。 今年はそんな勝ちっぷりをみせる馬があらわれるのか。楽しみだ。データはGⅢ時代も含めた過去10年分を使用する。 1番人気【4-1-2-3】勝率40.0%、複勝率70.0%。さすがに好素材がそろう出世レースで1番人気に推される馬はそう凡走はしない。一方で、4番人気【3-2-1-4】勝率30.0%、複勝率60.0%、5番人気【1-1-0-8】勝率10.0%、複勝率20.0%あたりまではチャンスがある。 素質馬が多いこともあり、ファンがつけた序列に抗うこともある。8番人気【1-1-0-7】勝率11.1%、複勝率22.2%など人気の盲点をつくことも考えよう。
大物感あるクロワデュノールの真価を問う
今年も東京の新馬快勝のクロワデュノール、中京で新馬を勝ったサトノシャイニング、札幌2歳S3着ファイアンクランツなど世代上位評価の馬が登録している。 まずは前走GⅢ【3-1-0-10】勝率21.4%、複勝率28.6%から。同じ東京のサウジアラビアRC(GⅢに格上げされた2016年以降)は【2-0-0-0】で、同距離札幌2歳Sが【1-0-0-6】勝率、複勝率14.3%。2018年ニシノデイジーが連勝を決めただけだ。 賞金加算に成功し、経験を積む目的での参戦ならいいが、札幌2歳Sで敗れ、ここで巻き返しを期するのは簡単ではない。それだけ東京スポーツ杯2歳Sはレベルが高い。ファイアンクランツは筋としてはよくない。 次に【5-4-4-24】勝率13.5%、複勝率35.1%と質量とも充実の前走新馬組をみる。ここは距離がわかりやすい。前走1800m【5-2-2-15】勝率20.8%、複勝率37.5%が中心だ。 クロワデュノールが前走1800mからの臨戦。母ライジングクロスはイギリスオークス2着馬。産駒はフラワーC2着のアースライズがいるぐらいで際立った活躍馬は送っていないが、父キタサンブラックと母の父ノーザンダンサー系はイクイノックス(母の父キングヘイロー)など好相性。なかでもダンチヒ系はハービンジャーが勝率25.0%、デインヒルダンサーが同26.7%、オーペンが同80.0%と目立つ(2024年11月3日時点)。再び大物を送ってもいい。 クロワデュノールの新馬は後半1000m11.9-11.5-11.3-11.1-11.5。良血アルレッキーノを2番手からとらえ、2馬身半差をつけた。後半1000mのラップをみても単に脚が速いだけの馬ではない。 前走1800m超【0-2-1-8】複勝率27.3%と苦戦しており、サトノシャイニングはデータ上、推せない。ちなみにサトノシャイニングという名前は2代目。初代は2013年生まれで2代目と同じ下河辺牧場の生産だ。父ステイゴールド、母ビーフェアー。JRA4戦未勝利後、園田へ転出した。たった9歳ちがいの2代目は珍しい。馬主の思い入れが伝わる一頭だ。 2代目といえば、登録があるプレシャスデイも同じ。初代は1995年生まれ父エルプラドの外国産馬。JRA2戦未勝利で高崎へ移籍した。こちらは馬主が異なり、2代目とのつながりはさしてない。「貴重な日」という由来の響きがいいからだろう。競走馬の馬名には2代目、3代目の同名馬が意外と多いので、調べてみると面白い。 話を1800m新馬組に戻す。前走1800mはクロワデュノールのほかに、新潟で勝ったジーティーマン、福島デルアヴァーがいる。興味深いのは中央開催【4-1-1-8】勝率28.6%、複勝率42.9%、ローカル【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%で東京、中山、京都、阪神とそれ以外では差があることだ。1800m新馬とひと口にいっても、中央場所での勝利を上にとるべきだろう。このデータを踏まえても、クロワデュノール優勢は動かない。 最後に前走未勝利【0-3-2-19】複勝率20.8%について。こちらも1800mだと【0-2-1-7】複勝率30.0%と確率が上昇する。それ以外は【0-1-1-12】。上記プレシャスデイ、ニシノイストワールは複勝圏なら可能性あり。馬券に組み込もう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳