天皇陛下の青春の地 英オックスフォード留学【皇室a Moment】
◾️“デンキ”と呼ばれたり、傘を盗まれたり……
ちょっと笑ってしまうのが、陛下が「しまったと思った時には後の祭り」だったと綴られているエピソードです。友人から「殿下」という敬称の「Your Highness」の日本語を聞かれて「殿下」と教えた時、天井の電灯を指して「これは“デンカ”ではなく、“デンキ”だから間違えないように」と伝えたところ、友人はおもしろがって陛下を“デンキ”と呼んだそうです。 ――“デンキさん”と呼ばれてしまったんですね。 また、雨の日、図書館の傘立てで愛用の傘を盗まれ、激しい雨の中を10分近くずぶ濡れになって走って帰り、風呂に直行されたこともあったそうです。 ――日本では陛下の傘が盗まれるということはまず起こらないことですよね。 傘立てにさすということが、まずないでしょう。
■カルテット、ボート、登山……様々なことに取り組んだ2年間
陛下は、留学生活をこう振り返られています。
天皇陛下:「私はオックスフォードでの学生生活を大いに楽しみました。オックスフォード大学が与えてくれた比類ない豊かな機会を、この先もずっと大事にしていきます」
陛下は日本からビオラを持参して仲間とカルテットを組んだり、オーケストラに参加されたりしました。
またテニスやスカッシュを友人と楽しみ、「テムズ川で漕ぎたい」と、ボート部の主将に頼んで漕がせてもらったこともありました。
さらにイギリス各地の名峰に登り、冬はスキーも楽しまれました。 『テムズとともに』には、「それにしても我ながらオックスフォード留学中、実に様々なことに取り組んだものである」と書かれていますが、本当に2年間でよくぞここまでいろんなことを、と驚くほどの体験をされています。 ――本当に充実された学生生活で。はじめに「様々な国の文化を学びたい」とおっしゃってましたが、まさに有言実行ですね。
◾️いっそこのまま時間が止まってくれたら――赤裸々な胸の内も
『テムズとともに』には英国を離れる時の胸の内が赤裸々に書かれています。 ――こちらです。
「再びオックスフォードを訪れる時は、今のように自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。おそらく町そのものは今後も変わらないが、変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が止まってくれたらなどと考えてしまう」 ――本当に大切な時間だからこそ、過ぎていく切なさみたいなものも感じますね。