「亡き母の好きな曲も…」ストリートピアノで活躍のハラミちゃん「リクエストの即興は1000本ノック」
実際、ピアノの椅子に座ると、本当に自宅にいるような感覚になれるんです。この前、初めてプロ野球の始球式をつとめたことがあるのですが、マウンドからボールを投げたとき、信じられないくらい緊張しました。 私は人前に強いと勝手に思いこんでいたのですが、ピアノだからふだんは緊張しなかったんだと気づきました。私、弾く前は緊張でピーピー騒いでけっこううるさいんですけど、ピアノの椅子に座ると緊張しなくなるという、不思議な現象が発生するんですよね(笑)。
■リクエスト即興演奏は「1000本ノックのようなもの」 ── 不思議な現象(笑)。それだけピアノとの信頼関係がしっかりしているのかもしれません。ところで、リクエストに応えて即興で弾くって、どういう仕組みなんでしょうか?準備をしたり、練習しなくても弾けるものなのですか? ハラミちゃん:即興で弾けるようになるには、いろんな能力が必要です。たとえば、耳コピするには絶対音感が必要だし、記憶力も必要です。場数をふんで引き出しを増やすことも大事で、これらがかけあわされると即興ができるようになります。
小1から高3まで毎週、音楽の授業の前後に友だちのリクエストに応え続けた結果、ある程度、引き出しは増えましたね。 ふだんからこういう即興を、1000本ノックみたいに自分で行っています。それこそストリートピアノでやることもありますし、生配信でコメントをもらった知らない曲をその場で聴いてアレンジすることも。 ── 即興で弾いているとき、頭の中はどうなっているんですか? ハラミちゃん:よく「脳に楽譜が浮かんでいるの?」のと聞かれますが、私の場合はそうではありません。皆さんも、たとえば『世界に一つだけの花』を歌ってくださいって言われたら、口ずさめるじゃないですか。
その感覚で指が動くんです。歌うのと同じ感覚です。ピアノはオーケストラみたいに多彩な楽器の音色や組み合わせで展開できるので、表現の幅がより広がります。 PROFILE ハラミちゃん ポップスピアニスト。「ピアノを身近な存在にする」を目標に、2019年からYouTubeにて活動開始。YouTubeのチャンネル登録者数222万、動画総再生数7億回以上。日本全国、世界各地のストリートピアノへと出向き、YOSHIKIさん・広瀬香美さんなど多くの著名人とのコラボ。2023年、全国47都道府県ツアーで5万人を動員するなど活動の幅を広げている。
取材・文/岡本聡子 写真提供/ハラミちゃん
岡本聡子