「ゆるやかな学びの場」大阪のSCで市民形成の図書館人気
メッセージを書き連ねてオリジナルな作品に
まちライブラリーでは、本の寄贈者が師匠、本の借り手が弟子の役割を演じ合う。1冊ごとに師匠と弟子の役割を交替しながら、ゆるやかな学びの場を形成していくことになる。 1枚のメッセージカードが担う役割も大きい。著名作家の名作も、20万部印刷されれば、それぞれの本は、量産されたペットボトルなどと同じく、20万分の1の均一な「製品」にすぎない。 しかし、新たなメッセージをカードに書き加えることで、「1冊ずつ異なるオリジナルな『作品』としてよみがえらせることができる」と、礒井さん。「製品」から「作品」へ。さらに読み手がカードに感想などを書き連ねるごとに、オリジナリティが高まっていく。1冊ごとに個性的な作品世界が創造されることになる。 全国180か所のまちライブラリーのうち、110か所あまりが関西圏に集中している特色に関して、礒井さんは関西人気質がプラスに働いたと分析する。 「関西人は元々組織依存度が低い。おもしろいと判断したら、わがごとととらえ、自身で動いて実現させる。しかも、本を読みつなぐ文化には発酵の時間が伴う。じっくり発酵させる時間を持てるのは、歴史を積み重ねてきた関西のゆとりでしょう」(礒井さん)
子どもたちグループも本が読みたい
町から書店が消えていく時代、本と接する機会も少なくなりがちだ。自宅近くの小さな本屋さんで、店主にけむたがられながら、好きな本や漫画を立ち読みした経験の持ち主も、今ではめっきり減ってしまったのではないだろうか。まちライブラリー@もりのみやキューズモールには、子どもたちがグループでぶらりとやってくるという。 「本と接する機会が少なくなったものの、本には関心があるのでしょう。将来的には、公立図書館や大学の図書館が周囲にない地域のすき間を、まちライブラリーで埋めて、いつでも本とふれあえる環境を、市民のみなさんと醸成していきたい」(礒井さん) キッズコーナーでは、2歳の男の子が、ママの読み聞かせる大きな絵本に夢中になっていた。詳しくはまちライブラリーの公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)