「ゆるやかな学びの場」大阪のSCで市民形成の図書館人気
「ゆるやかな学びの場」大阪のSCで市民形成の図書館人気 THEPAGE大阪
大阪・森ノ宮に新しいショッピングセンター(SC)「もりのみやキューズモールBASE」が4月下旬にオープンしてから1か月あまり。カルチャー部門のテナントのひとつ、本好きの市民が図書館を自主的に作り上げていく「まちライブラリー@もりのみやキューズモール」が、順調な滑り出しをみせている。町から書店が消えるなど本と接する機会も少なくなりがちだが、本に興味を持つ人はたくさん。その本を通して、ゆるやかな学びの場が形成されつつあるという。
市民が本を持ち寄り開設する新方式
屋上に1周300メートルのランニングトラックを持つもりのみやキューズモールBASE。平日の昼下がりに訪ねると、少し遅いランチを取るビジネスパーソンや幼い子どもを連れた子育てママ、散策中のシニア世代など、幅広い層が思い思いにくつろぎのひとときを過ごす。 これまでの森ノ宮になかった光景だ。開放的な店内の2階にまちライブラリーがあり、カフェやキッズコーナー、FM局のスタジオなどを併設している。 まちライブラリーは個々人が本を持ち寄り、店舗やオフィス、医療機関、社寺など、人が集まる場所に本棚を設置し、本を通じて市民が交流するコミュニティ型のライブラリーだ。 2011年の1か所目開設以来、小さなスペースでも始められるため、すでに全国180か所までネットワークが拡大。まちライブラリー@もりのみやキューズモールは、大型ショッピングモール内に開設された本格的ライブラリーとして注目を集めている。
開設1か月余で寄贈書籍数は4000冊
メッセージカードが、通常の図書館と違うまちライブラリー独自の仕組みだ。本を寄贈する際、寄贈者が本に対する思いなどをカードに記入。借りて読んだ人が感想などをカードに書き連ねていく。1冊の本をきっかけにして、新しい出会いと交流が生まれるわけだ。会員になると貸し出しサービスを受けることができる。 4月下旬のオープン以来、会員は400人、寄贈書籍数は4000冊を超えた。利用者は週末が1500人、平日500人で、平日もにぎわう。 まちライブラリーの提唱者で、一般社団法人まちライブラリー代表理事を務める礒井純充(よしみつ)さんは確かな手応えの中でも、「本を寄贈したいと考えている人が予想外に多いことが分かった」と、寄贈に関する反響の高さを重視する。 「読書とは本は読んだだけでは完結しない。本を読んで感じたことを、だれかに伝えて共有することにこそ、読書本来の意義があるのではないでしょうか。日本では古くから本を読んで聞かせる口伝という読書慣習が根づいていました。学びの場では、書物に書かれている知識や情報とともに、本を読んだ師匠の考えも弟子に受け継がれていく。人と人のつながりの大切さを示しています」(礒井さん)