人の脳内から「マイクロプラスチック」初めて検出 人体が侵されることによる“健康被害”とは
マイクロプラスチックの研究は?
編集部: 今回の研究では、マイクロプラスチックがテーマになっていますが、マイクロプラスチックが健康に及ぼす影響については、ほかにはどのような研究があるでしょうか? 勝木先生: マイクロプラスチックに関する研究は世界中でおこなわれており、人体への影響は大いに注目されています。 例えば、イタリアのカンパニア大学ルイジヴァンヴィテッリらの研究グループは、体内に侵入する化学物質を含んだ小さなプラスチック片が心臓の健康にどう影響するのかを調べています。 この研究は、257人の患者に対して術後3年近く追跡がおこなわれ、58.4%にあたる150人の患者の頸動脈プラークからポリエチレンが検出されました。 電子顕微鏡検査では、プラークのマクロファージ中に、目に見えるギザギザのエッジをもった異物が存在していることも確認されました。 頸動脈プラークにマイクロプラスチックが確認された人は、そうでなかった人と比べて、心臓発作や脳卒中の発症、何らかの原因での死亡が約4倍多いという結果が示されました。 この研究成果は学術誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されているので、興味があれば一読するのも面白いと思います。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: ブラジルのサンパウロ大学らの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。 勝木先生: マイクロプラスチックによる環境汚染は、健康に関する新たな懸念事項となっています。これまでも肺や腸などの臓器でマイクロプラスチックが検出されていましたが、脳で発見されたのは初めてです。 脳には、血液中の物質が簡単には届かない「血液脳関門」というバリアがあるのですが、それを超えてマイクロプラスチックが脳に届いているというのは驚きです。もしくは、鼻から直接神経に入り込んだ可能性もあります。 マイクロプラスチックによる脳の健康への直接的な影響は現時点で不明ですが、マイクロプラスチックによる環境汚染が様々な臓器に影響を与え得ることを示唆する報告です。 今後もマイクロプラスチックに関する研究やどのような病気が起き得るのか報告が期待されます。