<センバツ・夢へ続け!>仙台育英/下 感覚より「数字」追究 須江監督の「データ野球」 欠点把握し、チーム底上げ /宮城
「他チームに対する分析は、どこの学校よりもたけている」と須江監督は言い切る。ブラッド・ピット主演の映画「マネーボール」の公開前から、野球を統計学的に分析する「セイバーメトリクス」が好きだったという。なぜデータ野球を始めたのか。 初めて導入したのは、仙台育英に赴任する前、系列校の秀光中で監督を務めていたときだった。軟式野球部が創部され、須江監督に声がかかった。入部してきた生徒たちは、学力は高かったが野球はド素人。「地区大会でコールド負けするくらい、本当に弱かった」という。若さと情熱で突っ走った5年目、全国大会に初出場。選手の成績をデータ化し分析する手法を取り入れて8年連続出場し、全国制覇も果たした。 なぜデータにこだわるのか。「コンプレックスがあるので、自分の話に説得力がほしいんでしょうね」と監督は話す。甲子園に出たいと、地元埼玉を離れて仙台育英に入学。だが、他の部員とは大差があった。選手を諦め、2年秋から学生コーチに。「良い選手じゃなかったから、感覚的なものじゃなくて、数字を互いに共有しながら進めていくのがスマート」とデータを扱うのが好きになった。 データ分析は「日本一激しい」と言われるレギュラー争いの選考基準となる。1次選考では、身体能力の測定と守備力のチェックが行われる。通過するのは全体の半数の25~30人。2次選考では紅白戦が行われ、野手は打率のほかに長打率や出塁率、投手はどれだけ安打を許したかを示す被打率やストライク率などが見られる。 各選手の記録や成績などをまとめるのは、グラウンドマネジャー守谷(2年)の役目だ。「データはチームの基盤というか、なくてはならないものになっている」と話す。 須江監督は練習後のミーティングでも「分析をした先に勝敗が出る。事前の情報収集と分析が非常に重要になる」と部員に説く。 秋季東北大会で1番を打った浅野(2年)は「育英に入ってから、野球に対する考えががらりと変わった」という。1年生の時に他校のデータ収集を担当した吉野(同)は「今まで以上に相手打者の特徴を意識するようになり、守りやすくなった」と振り返る。 数値として可視化することによって、選手一人一人が身体能力の向上や、欠けている部分を把握することができる。それが個人のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の底上げにつながっているという。【面川美栄】