【追悼】フジコ・ヘミングさん「ピアノと同じくらい情熱を注いだ絵画」猫、家族、浮世絵の影響も
日本人の母とスウェーデン人の父のあいだに生まれ、幼いころから、ピアノに親しんだフジコ・ヘミング。92歳のいまに至るまで、音楽への情熱を絶やさず、欧州と日本を中心に世界各地で演奏家生活を続けている。 そんな彼女が音楽と同じように情熱を注いできたのが絵を描くこと。画家としての活動は知る人ぞ知るものだったが、欧州におけるその評価は高く、これまでに画集も発表している。長年にわたって描き続けてきた作品から、彼女が愛したモチーフごとに選りすぐりの作品をご紹介する。 ※この記事は2024年4月30日に公開したものです。
花《猫とバラ》
作品の多くには色鮮やかな花の数々が描かれている。メインのモチーフとすることもあれば、部屋の隅やピアノの上に、ささやかな花束が描かれることも。いつも花に囲まれて暮らしていることが窺える。 窓の向こうからこちらを覗いているのは2匹の猫。そばには鮮やかな大輪のばらが咲いている。本作に限らず多くの作品で強い印象を放つばらは、フジコが幾度となく絵に描いたモチーフ。作品全体に気高さと毒々しさを醸している。
《スウェーデンの花》
鮮やかかついきいきと咲き誇る花々は実に色とりどりで、フジコの類い稀な色彩感覚が堪能できる作品。背景には五線譜が描かれており、まるで花が楽しげに音楽を奏でているように見える。上部には花から花へと移る美しい蝶が。
家族《父とダンスの思い出》
幼少期の思い出や家族とのエピソードを表した作品も多い。また猫はフジコにとっては愛する家族の一員。ともに暮らしてきた愛すべき存在との日々を絵の中に閉じ込めた。
《捨てられた動物たち》
長年、動物愛護活動に熱心に取り組むフジコらしい、動物たちへの愛に溢れた一作。一度は人間に見放された猫と犬を愛おしそうに見つめる眼差しから、温もりが見てとれる。
ジャポニズム《桜》
葛飾北斎に影響を受けたと明言するように、浮世絵にインスピレーションを得た作品も見られる。古典的なモチーフもフジコにかかれば、ユーモラスかつモダンな印象を放つ。 フジコは演奏する際の衣装として自らきものを選ぶことも多く、伝統的な和装を好む一面がある。精緻に描かれた満開の桜が見事。舞い散る花びらに儚さが漂っている。