【フィギュア】羽生結弦「RE_PRAY」で見せたプロの仕事 なぜ、彼はこんなにもストイックになれるのか?
魂がこもった約2時間半の熱演だった――。2014年ソチ、18年平昌でオリンピック(五輪)2連覇を果たしたプロスケーターの羽生結弦さんの初の単独ツアー公演「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd ”RE_PRAY” TOUR」が19日、横浜市・ぴあアリーナMMで千秋楽を迎えた。 昨年11月の埼玉、1月の佐賀、そして17日から始まった横浜を合わせた全6公演を全力で駆け抜けた。メディア公開された19日も、一瞬たりとも気を抜かず、精根を使い果たすほどのパフォーマンスで、ゲームの世界観を通じ、命についても問う壮大なストーリーを演じ切った。
「やっとノーミスでできた」
あいにくの悪天候に見舞われた2月19日午後の横浜は、雨脚が強くなっていた。JR桜木町駅からぴあアリーナMMへと続く道を、多くのファンが歩みを進めていた。 その背中には「RE_PRAY」がデザインされたスカイブルーのパーカーが鮮やかな色彩を放つ。この日、羽生結弦さんの氷上でパフォーマンスをみようと、会場は満員の7000人が埋めつくした。 プロジェクションマッピングなども駆使した演出の中、羽生さんはアンコールも含めた12の演目をときに情熱的に、ときにしなやかに、曲調に合わせた華麗なスケーティングで会場を沸かせ、そして魅了した。 前半の最後には、試合さながらに6分間練習を入れ込み、このツアーから演じる新プログラム「破滅への使者」を披露した。トーループとサルコウの4回転を単発で決め、高さと幅のあるトリプルアクセルも2本跳んだ。 競技会の枠を飛び出した4回転トーループからの5連続も鮮やかに回る。高難度で構成されたプログラムを、初めてノーミスで滑りきった。
羽生さんはアンコールに入る前のマイクパフォーマンスで、「やっと、ノーミスできたー」と収穫を口にし、満面の笑みを浮かべた。それだけ、思い入れが強かった。 「アイスストーリーは改めてめちゃくちゃきついなと感じています。もともと(昨年2月に東京ドームで開催された単独公演の)『GIFT』は、1回公演だったということもあり、前半の最後の演目が、試合のプログラムでしたが、ショートプログラムだったのでまだなんとかやれたのかな、と思います。 今回は、構想上、フリーとほぼ同じで挑みたいと思って(プログラムを)作っていったのですが、本当に大変でした。ただ、ツアーという形で、何回も何回も挑戦をさせていただくことによって、やっと『こういう風にトレーニングをしたら結果が出せる』という手応えみたいなものを改めて感じることができました。毎回、毎回レベルアップできるように、経験を積んで、より一層、技術的にも高い自分を見せていけるように(取り組んで)、(今後も)頑張れるんじゃないかなっていう希望を持つことができました」 「破滅の使者」をミスなく演じきれたことに、さらなる進化の可能性を見出しているようだった。 「試合みたいな感じになってしまいますが、『やっと練習が報われたな』と思いました。毎日3回通して3回ともノーミスして、みたいなことをやっていますが、(公演では)前半全てを通し切りながら、(会場内に流れている)映像の部分は、ひたすら着替えて靴を履いてみたいなことをずっと繰り返して、握力もなくなっていく中で滑るのとは全く違います。でも、こうした中でノーミスできたことは、改めて自分がやってきたことが正しかったんだと思える瞬間でもありました」