MS、Nvidia、OpenAIが「反トラスト法」で調査対象に…世界的「生成AIブーム」の裏で何が起きているのか?
「悪魔に魂を売った」と言われたOpenAI
これと同様の嫌疑は、マイクロソフトとOpenAIの関係にも向けられている。 マイクロソフトがOpenAIへの10億ドルの初期投資を決めたのが2019年7月のことだ。それから間もなく20億ドルを追加して総額30億ドル(当時の為替レートで3000億円以上)の巨額投資となった。 この段階では、当時まだ無名のOpenAIの技術力を発掘したという点で、マイクロソフトには先見の明があったと高く評価されている。が、2023年早々にChatGPTが一大ブームを巻き起こしてOpenAIが有名になると、マイクロソフトは同社への実に100億ドルの追加投資を決め、総額130億ドル(同1兆7000億円以上)もの巨額出資となった。 この時点でマイクロソフトはOpenAIの発行株式の49%を握って筆頭株主となった。仮に50%以上になれば、マイクロソフトはOpenAIを子会社化することになるので、これも反トラスト法に抵触する恐れがある。その一歩手前で踏みとどまった、ということになる。 しかも、その出資の仕方が妙なのだ。マイクロソフトによる総額130億ドルの投資と言っても、実際にはその巨額資金はOpenAIが自由に使えるキャッシュとして提供されたのではなく、マイクロソフトのクラウド・コンピューティング「アジュール」の使用料として提供されたと見られているのだ。 しかも、それによってOpenAIが開発するGPT-4やChatGPTなどの生成AI技術はマイクロソフトに排他的にライセンス提供される。つまりマイクロソフトは自社株も現金も提供することなく、単に自社の豊富な計算機資源をOpenAIに使わせてあげるだけで、同社の発行株式の約半分と高度な技術力を手に入れたことになる。 当時、こうした取り決めはOpenAIの一部従業員らの間で「悪魔に魂を売った」とまで酷評されたそうだが、逆にそうまでしなければならないほど、同社は追い込まれていたと見ることもできる。 GPT-4など大規模言語モデルの開発には膨大な計算機資源が必須であり、それを当時は未だ弱小のスタートアップだったOpenAIが手に入れるためには、たとえ不利な条件でもマイクロソフトと手を組まざるを得なかったのだろう。