MS、Nvidia、OpenAIが「反トラスト法」で調査対象に…世界的「生成AIブーム」の裏で何が起きているのか?
スタートアップ企業を買わずに手に入れる方法
一方、マイクロソフトについては、生成AIを開発する一部スタートアップ企業との不透明な関係がFTCによる調査対象となっている。 今年3月、米国で「パイ(PI)」と呼ばれるチャットボット(ChatGPTのような生成AIの一種)を開発・提供する「Inflection AI」というスタートアップ企業の創業者・CEOのムスタファ・スレイマン氏が、突如同社の職を辞してマイクロソフトに入社し、そのAI開発を指揮していくことになった。 同氏は(グーグル傘下で囲碁の世界チャンピオンに勝ったアルファ碁を開発したことで知られる)英ディープマインドの共同創業者として知られる。 このように、有能なAI研究者としても知られるスレイマン氏だが、彼の後を追うようにInflection AIの従業員(研究者、技術者)たちも続々とマイクロソフトに入社した。こうして主力エンジニアのほとんどはマイクロソフトに移籍したと見られている。 しかも、残された従業員が働くInflection AIは今後、マイクロソフトと提携して生成AIの技術を同社にライセンス提供していくことになった。これではマイクロソフトが事実上Inflection AIを買収するのと同じではないか、と見られている。 それまでInflection AIの業績は芳しくなかったため、スレイマン氏をはじめマイクロソフトに移籍した研究者、技術者らはホッとしている。一方、マイクロソフトにしてみれば、世界的な生成AIブームの中で希少資源とも言える有能なAI研究者を多数確保できて良かった、ということになる。 しかし、それならなぜ、マイクロソフトはInflection AIをスッキリ買収しなかったのか? その理由は、もしも本当に買収してしまえば、反トラスト法つまり独占禁止法に抵触すると考えたからであろう。その網をかいくぐるために、あえて「不自然な雇用形態」という策を弄したのではないか? ――この点を今後、FTCは調査していくことになるのだろう。