将棋「電王戦」は来春終了へ 新しく始まる「タッグマッチ」とは?
「人類だけでは作りえない高み」へ
昨年3月、この対戦の意義を見出して「アドバンスド将棋」として、「人間とソフトの連合軍」対「ソフト」という対局を主催した工学博士の伊藤毅志氏 (電気通信大学情報工学科助教)は、電王戦タッグマッチについて「自然な展開」としながらも、「人類だけでは作りえない高みへの挑戦となるイベントになることを期待します。単なる興味深い”お祭り”で終わってほしくない」と語ります。 伊藤氏は「チェスではハードウエアの統一やソフトウエアの利用方法について厳密な規程があり、意義ある対戦になっています。将棋でもレギュレーションを整えて、きちんとした棋戦に成長して欲しい。チェスの分野では、最近はさらに進んでいて、ハードウエアや参加する人間の制限もなくしたフリースタイルチェスと呼ばれるチーム戦のイベントが行われるようになり、あまり強くないプレイヤーでもコンピューターを使いこなすことで、グランドマスター(名人)クラスのプレイヤーに勝つ事例も起こっています。コンピューターの性質を熟知したアマチュアプレイヤーも 参加できるイベントに発展して欲しい」と話しています。 アドバンスド将棋に対局者として参加した元「週刊将棋」編集長の古作登氏(大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員)はコンピューターと組む効果について、「ポカの防止や、直観で選んだ手の善悪を確かめられること、詰みに近い局面でのソフトの絶対的な信頼度など、私レベルの棋力なら大いにプラスの効果がある」と指摘します。一方で、タイトル保持者などトップ棋士がソフトを使って棋力向上につながるかどうかは「わからない」としています。 さらに「私は人間が不安や恐怖、ミスによって生じた逆境を乗り越え、棋譜を作っていくことに感動を覚えますので、ミスも含めて作品としての価値が生まれると思う。したがってアドバンスドを用いたミスがない対局が素晴らしい内容の将棋とは必ずしも思わない」と話します。