日本が北朝鮮と国交正常化したらどうなる?
7月13、14日と、2日間にかけて北朝鮮は日本海に向けて約100発の多連装ロケット弾を発射しました。日本を狙ったミサイル発射でなかったにしろ、改善に向けて少しずつ前進している日朝交渉に悪影響を及ぼしかねない北朝鮮の軍事行動です。日本政府は抗議しながらも交渉の糸は切っていませんが、北朝鮮が核実験や長距離弾道ミサイル発射実験だけでなく、軍事行動を続けると、さすがに日本政府も交渉を断念せざるをえないでしょう。また、「軍事行動を続けるような危ない北朝鮮と交渉する必要があるのか?」という意見が出てくるかもしれません。 それにもかかわらず、日本政府が交渉を続けるのは日朝交渉の真の目的が拉致問題解決だけではなく、その先にある大きなゴール、すなわち「北朝鮮との国交樹立」だからです。
“ゴール”は国交樹立
2002年に小泉元首相と故金正日国防委員長の間で交わされた「平壌宣言」、そして、今回の日朝間の合意文に「国交正常化を実現するため」と明記されています。日朝間に限らず、様々な懸念事項を外交で解決するためには、やはり国交が必要となってきます。また、「世界的に孤立している」と思われがちな北朝鮮ですが、世界の約195か国中、約160の国と国交を結んでいます。北朝鮮と国交のない主要国家は日米仏と、実は国交を樹立していない国の方が少数派なのです。もちろん北朝鮮に限らず、国交があるからといって必ずしも関係が良好とはいえませんが、世界の多くの国家が「北朝鮮とのチャンネルは、ないよりあるに越したことはない」と判断しています。このような一般的外交論は抜きにして、日本が北朝鮮と国交を結ぶメリットの一つに「経済効果」があります。
国交樹立のメリットは
北朝鮮には、豊富な鉱物資源が埋蔵されています。資源ビジネスという面から見たら、国交正常化は、「北朝鮮資源ビジネス」に参入するチャンスではあります。また、国際貿易の中継地としても北朝鮮は魅力的な位置にあります。北朝鮮は、西と北に位置する中露という大国に陸続きであり、国際貿易の入り口として活用出来るかもしれません。 ただし、これらはスムーズに進めばという前提です。まず、「資源ビジネス」が成立するには、安定供給とインフラの整備が不可欠です。多くの国が北朝鮮の鉱物資源に注目していますが、本格的に乗り出せないのはインフラに莫大な投資が必要なこと、そして中長期的な安定供給が不透明だからです。莫大な投資をしたにもかかわらず、大して得るものがなかったらというリスクを鑑みると、多くの国家が「北朝鮮資源ビジネス」に躊躇せざるをえません。 国際貿易の拠点については、20年以上前から語られていますが、北朝鮮自身が閉鎖的な経済政策を取るため、遅々として進まない現状があります。後見人であり、圧倒的な国力を持つ中国でさえ北朝鮮とのビジネスは一部を除いて必ずしもうまくいっていません。 仮に、国交正常化によって一時的な経済的メリットはあったとしても、中長期的なメリットがあるかといえば極めて不透明です。多くの国と国交があり、それなりの経済効果があると見られているにもかかわらず、北朝鮮に本格的な投資が行われないのは、このような背景があるからです。もちろん、核・ミサイル問題で米国と対立していることから、どの国も北朝鮮への投資を躊躇せざるをえないという背景もあります。