日本が北朝鮮と国交正常化したらどうなる?
むしろ大きい政治的効果
では、日朝国交正常化する必要がないかといえば、そうでもありません。むしろ、経済的なメリットよりも、政治効果の方がはるかに大きいと言えます。 安倍政権が国交正常交渉の過程で、核・ミサイルを北朝鮮が放棄する道筋を作り出すことが出来たなら、安倍政権と日本の外交評価は、世界的に高まることになるでしょう。また、米中国交樹立を実現した第37第ニクソン元米大統領しかり、日中国交を樹立した田中角栄元首相しかり、対立する国家間における国交樹立の立役者は歴史に名を残すことになります。安倍首相も、金正恩第一書記も国交樹立を通じて大きな外交的成果を達成できるという点で、双方の利害関係は一致しているといえるでしょう。また、当面の課題である拉致問題に関しても、全面解決に向けた深い調査をするには、国交樹立は避けて通れません。
デメリットが潜む危うさ
しかし、国交樹立には大きなデメリットも存在します。北朝鮮は、日朝交渉や国交樹立によって得られる「見返り」という名の「資金」を「核とミサイル開発」に費やすかもしれません。そうなれば結果的に、日本が北朝鮮の軍事的脅威に貢献したことになります。また、日米韓は、北朝鮮対策で足並みを揃えてきましたが、この3国の信頼関係にもひびが入ります。逆にいえば、北朝鮮はこのように少しでも自分たちに有利な状況を作り出すことを虎視眈々と狙っているでしょう。 北朝鮮との国交樹立にはメリットもありますが、危うい地雷もたくさん存在します。その地雷をくぐり抜けて、日本が外交的成果を勝ち取るためには、「国交樹立ありき」の交渉ではなく、「行動対行動」の原則を貫くことが最も大切になってきます。 (高英起/デイリーNK東京支局長)