SF世界が現実に!?「三菱の無人戦闘機」は“脳みそ”搭載します 担当者を直撃したら「使い捨て」もありました
有人戦闘機の空の戦いの相棒となる無人機
もう一方の無人機は「戦闘支援無人機コンセプト」と呼ばれるものでした。展示されていた模型は実機の10分1の大きさで、開発した場合は有人戦闘機と同等くらいのサイズになるそうです。 「この無人機は離着陸用の脚があり、地上の滑走路から繰り返し運用することを想定しています。ですから、『ARMDC-20X』と比べると比較的高性能となっており、運用は有人機からの指示に基づいて脅威を探知したり、機体に搭載したミサイルを発射したりします」(三菱重工業の担当者) 現在、世界各国では有人機と連携して戦闘を行う無人戦闘機の開発が進められており、オーストラリアではMQ-28「ゴーストバット」、ロシアではS-70「オホートニク」などの無人機、アメリカでは「協調戦闘機(Collaborative Combat Aircraft)」という名称で複数の機体の開発が進められています。 1機の有人戦闘機に対して、複数の無人戦闘機がチームを組んで戦うことで、少ない人員でより効率的に戦うことが可能になり、また、戦闘の危険なパートを無人機に担当させることで、パイロットの損耗も防ぐことができます。 この「戦闘支援無人機コンセプト」も、そんな世界の無人戦闘機の流れに沿った三菱重工業の独自プロジェクトだといえるでしょう。
無人機のキモとなるAI開発はすでに進行中
世界各国で開発が進む無人戦闘機ですが、その開発でキモとなるのは機体といったハードウェアではなく、それを制御するAI(人工知能)技術にあります。 一般的な無人機は無線や衛星通信を使った遠隔操作が基本です。しかし、無人戦闘機となると、戦闘中の状況の変化が激しいため操作が遅延する遠隔操作は不向きです。そのため、機体内部のAIが制御を行い、有人機からの指示を基にして戦闘します。このように、AIで飛ぶ無人戦闘機は、周辺状況や脅威に応じて自機ですぐさま判断し続ける必要がありますが、その指針となるアルゴリズムの開発は一朝一夕で完成されるものではありません。 三菱重工業の担当者はAI技術に関して次のように説明してくれました。 「無人機開発においてAIはもっとも重要な技術要素のひとつとして考えており、弊社としては10年以上に渡って開発を行っています。開発についてもエンジニアだけで行うのではなく、チーム内に自衛隊OBの元戦闘機パイロットもおります。またAIを社有の小さな機体に搭載して、飛行試験を行うといったことも社内で行っています」 今回展示された模型は、三菱重工業が提案したコンセプト模型であり、これらがそのまま開発されることはないでしょう。しかし、三菱重工業は防衛装備庁から無人機とAI技術に関する業務を受注していることから、その具体的な成果は遠くない将来に見られるかもしれません。
布留川 司(ルポライター・カメラマン)