【災害現場へ行く人のために】能登半島地震から学ぶ民間船舶利活用の重要性、〝自衛隊頼み〟からの脱却のために
2024年元日、大地震が能登半島を襲った。石川県によると、発災から1カ月が経過した2月1日の時点で、死者は240人、安否不明者は15人に上っている。被災された方々が1日も早く日常を取り戻されることを祈るばかりだが、1月末からは全国から集まってきたボランティアによる復旧作業もスタートした。
陸の孤島と化した能登半島
1日も早く被災地に行って支援したいという彼ら彼女たちの思いとは裏腹に、道路が大きな被害を受け、寸断された半島は〝陸の孤島〟と化し、救援活動や物資輸送は難航した。自衛隊ですらLCAC(エルキャック)と呼ばれるエアクッション型揚陸艇を急派させ、海から浜に上陸、水や食料を担いで道なき道を踏破し、奥能登の輪島市や珠洲市、穴水町などの被災地にたどり着いている。 こうした過酷な状況下にあって、多くの被災自治体でボランティア受け入れのめどが立たなかったのもやむを得ないことだろう。しかも、受け入れが始まったとはいっても、断水で宿泊施設が限られているため、ボランティア活動が本格化するにはもう少し時間がかかりそうだ。 ただし、震災で半島内や過疎地が孤立するリスクは能登に限ったことではない。解決策の一つとしてPFI船舶の災害時利活用の拡大と運用の見直しを提案したい。
七尾港に急派された2隻のPFI船舶
PFI船舶とは、民間資金活用(Private Finance Initiative)の頭文字を取った船舶で、防衛省は離島侵攻対処や災害発生時に、民間の輸送力を効率的に活用し、大規模な人員や物資等を輸送するため、「ナッチャンWorld」(津軽海峡フェリー)と「はくおう」(新日本海フェリー)という2隻の大型フェリーを、2016(平成28)年から10年間総額約250億円で契約、運用している。
能登半島地震で同省は、現地の被害状況や被災者のニーズなどを検討、1月14日から陸上自衛隊が中心となって臨時のPFI船舶運用支援部隊を編成、石川・七尾港での活動を開始した。現在、現地では「はくおう」が被災者の入浴や1泊2日の休養施設として利用され、「ナッチャン」は被災市町に派遣されている国および県内外の自治体職員の宿泊と情報等を共有する災害対策拠点として活用されている。