スズキの8耐ファクトリーチーム「チームスズキ CN チャレンジ」 チームディレクターに直撃インタビュー(前編)
順調な仕上がりを見せる「チームスズキ CN チャレンジ」
2024年のFIM 世界耐久選手権第3戦「鈴鹿8時間耐久ロードレース」に、スズキがファクトリー体制で参戦します。どんな仕様のマシンなのか、チーム体制はどうなっているのか。そんなあれこれをチームディレクターの佐原伸一さんに聞きました。 【画像】,「チームスズキ CN チャレンジ」が手掛けた「GSX-R1000R」を画像で見る(14枚)
今年3月に開催された「東京モーターサイクルショー2024」において、スズキはサプライズ発表を行いました。それが「チームスズキ CN チャレンジ」という名のもと、鈴鹿8耐へ出場するというものでした。CNは、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させてプラスマイナスゼロにすること)を意味し、ゼッケンはその象徴である「0」になること、そして実験的なマシンが走る「エクスペリメンタルクラス」にエントリーすることが明かされたのです。 その詳細を聞くべく、チームを統率する佐原伸一さんにインタビューした内容が下記の通りです。(前編/中編/後編の全3回に分けて掲載)
―――まずは鈴鹿での合同テスト、お疲れ様でした。公の場で走りが披露されたのは今回が初めてですが(6/4~5)、かなりいいタイムでしたね。 直前に、竜洋(スズキのテストコース)でベース車両の確認を済ませてから鈴鹿入りしています。いくつかの課題に対して、竜洋で事前に対策品の確認ができていたおかげで、鈴鹿では大きな問題はなく、ホッとしています。最初に、ヨシムラSERTモチュール(以下、ヨシムラ)の渥美心選手に乗ってもらったところ、すぐに7秒台(2分07秒台)でしょ。ピットへ戻ってきた時に“どう?”と聞くと“普通です”と。普通という言葉に、あんなに安心したのは初めてです。 ―――久しぶりの走行になった濱原颯道選手も8秒フラット。2日間通しての結果は、トップグループに位置するものでしたが、その仕様から言って、スピードはもう少し落ちるものだと想像していました。 7秒台に入った時は、そのまま6秒台も……と考えましたが、テスト項目を優先することにしました。狙っていないのにあのタイムが出たことは嬉しい誤算でしたね。渥美選手にとっても手探りだったはずですが、パッと乗りではあまりに普通で、つまりヨシムラのマシンとそれほど変わりがなく、“たいしてコメントすることがなくてつまんない”って言ってました。 ―――テスト走行時のマシンは、本番と同じ仕様でしょうか? カラーリングも含めて、カウルだけはまだでしたが、それ以外はほぼ同じです。 ―――燃料もオイルもタイヤも? 基本的にテストで使用したものと同じ仕様を本番でも使う予定です。 ―――今回のエクスペリメンタルクラスは賞典外扱いということですが、それであのタイムなら上位に入ってくるポテンシャルがありますね。 いや、それほど簡単な話ではありませんが、最善を尽くすつもりです。ガソリンやオイルは事前のベンチテストで確認し、ある程度予想通り。タイヤに関して未知数の部分もありましたが、問題なく機能してくれています。他のチームとは異なるとはいえ(再生資源・再生可能資源比率を引き上げたタイヤを使用)、当然ブリヂストンの厳しい社内基準をクリアしているものなので信頼性についての心配はしていません。 ―――竜洋での事前テストは、どれくらいしたのですか? そもそもチームのメンバーが決まったのが、今年の4月末。ゴールデンウィークもあったので、5月中旬の1回と、後は鈴鹿入り直前に1回の計2回です。