<16カードここに注目 センバツ交流試合>白樺学園、投打にバランス 山梨学院、競り合いに勝機 第6日第3試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。17日の第3試合で対戦する白樺学園(北海道)と山梨学院(山梨)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む。 【写真でみる交流試合】智弁和歌山―尽誠学園 ◇白樺学院、本格派片山が投打軸 山梨学院、小技で揺さぶれるか 投打のバランスが良く打線に切れ目がない白樺学園は、点の取り合いに一日の長がある。山梨学院は接戦に強く、ロースコアの展開に持ち込めるかがポイントになりそうだ。 白樺学園は最速148キロの本格派・片山楽生を軸に、サイドスローの坂本武紗士らも擁し、右腕2人を中心に継投策に切り替えられる強みがある。 片山は左の巧打者で打線の中軸も担い、俊足の川波瑛平、チーム最多打点と勝負強い二ツ森学、広角に打てる宍倉隆太ら、多彩な顔ぶれが相手投手陣に圧力をかける。戸出直樹監督は「山梨学院は強いチーム。力と力の対決ができることは3年生最後の試合としてありがたい」と話す。 山梨学院は昨秋の公式戦9試合で27犠打飛、22盗塁と着実に走者を進めて相手を揺さぶった。1点差勝利は2試合と、競り合いの強さと試合巧者ぶりが光る。吉田洸二監督は「攻撃も守備も自滅しないこと。バントや走塁のミスをいかに少なくするかが大事」と話す。 昨秋、クリーンアップを務めた捕手の栗田勇雅、遊撃手の小吹悠人らは守備でもキーマン。守りからリズムを作ってエース左腕・吉川大を支え、自分たちの流れに引き込みたい。【藤井朋子】 ◇豊富な投手陣と切れ目ない打線 明治神宮大会4強の白樺学園 2019年秋の北海道大会で初優勝し、明治神宮大会では4強入りした。原動力は軸になれる右腕2人と、上位下位を問わずに得点できる攻撃力だ。 プロ注目のエース右腕・片山楽生(3年)は伸びのあるストレートにスライダーなど多彩な変化球を織り交ぜる。救援登板した明治神宮大会準決勝で健大高崎(群馬)に決勝点を許して以来、食事量を増やして体力を向上させ、球速は昨年の142キロから6キロもアップした。センバツ交流試合へ「強力打線を自分が抑えたい」と闘志をむき出しにする。 「片山だけじゃないところを見せたい」と語るのは、右横手の坂本武紗士(3年)だ。打者の手元で変化する球を武器に秋は主に救援で力を発揮。先発した健大高崎戦では5回2失点と試合を作った。2人に加え、190センチを超す大型の奥村柊斗(3年)、秋に3試合に登板した岩田拳弥(3年)、さらに葛西凌央(2年)と右腕3人も控え、充実した陣容を誇る。 打線も厚みがある。道大会は4試合で計42点を挙げ、チーム打率は4割3厘をマークし、戸出直樹監督は「切れ目がなく、どこからでも点が取れる」と胸を張る。 打線を引っ張るのは、秋は1番に入った川波瑛平(3年)だ。50メートル6秒0の俊足に加え、道大会でバックスクリーンに本塁打を放つなど長打力も備える左打者は「甲子園で一本でも多く長打を打ちたい」と意気込む。3番の宮浦柚基(3年)はチームトップの打率4割4分4厘をマークし、4番の片山は左の巧打者。下位にも3割打者が並ぶ。 主将で捕手の業天汰成(3年)は「甲子園はずっと目標だった。全力でプレーしたい」と夢舞台へ気合十分だ。【菊地美彩】 ◇白樺学園・業天汰成主将の話 (山梨学院は)関東大会2位と力があり、特に攻撃のチーム。今は、練習試合もこなしてレベルアップしており、甲子園に向けて仕上げていきたい。全力を出したい。 ◇OBに長野五輪金メダル清水宏保さんら 1958年に帯広商として創立され、65年に現校名に改称。野球部は開校と同時に創部。スピードスケートやアイスホッケー、陸上も強豪で、1月の全国高校アイスホッケー選手権で2年ぶりに優勝した。OBに98年長野冬季五輪スピードスケート男子金メダリストの清水宏保さんら。北海道芽室町。 ◇小学生から知る球児「がむしゃらに」スポーツ店主・佐藤肇さん 北海道音更町にあるうちの店には、白樺学園の選手たちが小学生だったころから野球道具を買いに来ていました。私は、中学の野球部を引退した選手を対象に、高校に向けて硬式球で指導する「十勝ベースボールスクール」を毎年開催していますが、当時から彼らの志の高さに非凡なものを感じていました。 センバツに続き、夏の甲子園も中止になり、進路をプロ野球に向けて気持ちを切り替えた選手もいれば、目標を失い落ち込む選手もいたようです。私もやるせない気持ちでいっぱいでした。でも、甲子園の土を踏ませてあげられて良かった。周囲の大人が頑張った結果でもあり、選手には感謝の気持ちを忘れず、がむしゃらに若い力を発揮してほしいです。 ◇粘り強さで秋は関東凖V 甲子園経験者がエース支える山梨学院 バントやヒットエンドランなど小技や足を絡めた攻撃を得意とする。少ない好機を生かす持ち味が凝縮されていたのが、昨秋の関東大会だ。文星芸大付(栃木)との1回戦は九回に2ランスクイズを決め、4強入りを懸けた花咲徳栄(埼玉)との準々決勝は、犠打で着実に走者を進めて2―1で競り勝った。桐生第一(群馬)との準決勝では1点を追う九回に2点を奪って逆転勝ち。接戦での粘り強さも発揮し、26年ぶりの決勝進出を果たして準優勝した。 夏は昨年まで4年連続で甲子園に出場。昨秋の公式戦でチームトップの打率4割8分5厘をマークした栗田勇雅(3年)、小吹悠人(3年)ら中軸打者は大舞台の経験がある。関東大会決勝で健大高崎(群馬)の大型右腕の力強い直球に手が出ず零封負けした教訓から、ピッチングマシンを使って速球への対応力を磨いてきた。 秋の公式戦全9試合に先発した主戦の左腕・吉川大(3年)はスライダーやカーブなどを低めに集めて打たせて取るタイプ。体のキレを重視しつつ、ウエートトレーニングで筋力も強化してきた。 新型コロナウイルスの影響によるセンバツや夏の甲子園の中止で選手たちは目標を見失った。活動自粛が明けた後の練習は身が入らないこともあったが、選手同士で話し合い、「最後までやりきろう」と決めた。この間、積極的に声を掛けてきた主将の功刀史也(3年)はセンバツ交流試合の開催が決まると「1試合でも甲子園で試合ができるのはありがたい」と喜んだ。 試合勘を取り戻そうと積極的に練習試合を組んできた吉田洸二監督は「今までやってきたことを全て発揮し、勝って終わりたい」と話している。【金子昇太】 ◇山梨学院・功刀史也主将の話 (白樺学園は)明治神宮大会で4強入りし、投手がとてもよいという印象。さまざまな方のお陰で実現した甲子園なので、感謝して最後まで一生懸命プレーしたい。 ◇サッカー部、駅伝部は全国制覇 1956年開校の男女共学校。系列の大学、中学などもある。野球部は57年創部で、94年に甲子園初出場。サッカー部は2009年度の全国選手権で初出場初優勝の快挙を達成した。駅伝部は13年に男子が全国高校駅伝で初優勝。OBに明石健志選手(ソフトバンク)ら。甲府市。 ◇「やりきったと思える試合に」野球部保護者会長・渡辺努さん センバツに続き、夏の甲子園も中止になったことで3年生は試合ができないまま引退する可能性もあったので、センバツ交流試合が開かれるのは喜ばしいです。親としてはもちろん楽しみですが、選手たちには開催に向けて動いてくれた多くの人たちに思いを巡らせ、感謝の気持ちで試合に臨んでほしいです。 選手たちの中には練習を頑張ってきたけれど、レギュラーになれなかった選手もいると思います。ただ、大切なのは甲子園出場に向けて費やしてきた時間だと思います。高校野球にささげた日々を無駄にしないためにも、それぞれが「やりきった」と思える交流試合にしてほしい。全員が全力プレーをすることが、最高の恩返しになるはずです。