日本の株式市場にはびこる「配当」の思い込み 一般投資家にとっての株式の「真の」魅力は? アメリカと比較
赤字決算だから無配なのではなく、成長投資に資金が必要だからという理由で配当をしていなかった。 AI(人工知能)向けの半導体で急成長しているエヌビディアは無配ではないものの、ほとんど無配と同じ程度の配当しかしていない。しかし投資家に人気がある。成長への期待が高いからである。 アメリカと異なり、日本の株式市場において投資家が配当を好む理由には、次の3つがありえよう。 1 「多くの日本企業には成長領域が少ないため、内部留保する必要性に乏しく、そうであるのなら積極的に配当すべきだ」と投資家が考えているから。
2 「社長などの企業経営者の多くは頼りないから、内部留保したところで無駄になるだけだ」と投資家が考えているから。 3 配当への信仰。企業も投資家も、「普通の企業に無配はありえない」「無配はダメ企業」と考えている。少しでもいいから配当することが当然との風潮から。 少し飛躍すると、日本企業は横並びで配当している。企業経営者には、当期純利益の30%を配当するのが正しいとの思い込みが強いようだ。 ■日本における配当性向「30%」の信仰
日本企業が「無配はダメ、当期純利益の30%を配当するのが正しい」と思い込んでいるとすれば、それは重大な間違いだ。内部留保と企業成長との関係を完全に見逃している。 そこで配当について、日本とアメリカの状況を具体的に示しておきたい。 「当期純利益に対する配当の割合」を「配当性向」と呼ぶ。アマゾンやグーグルの配当性向は0%を続けてきた。 他方、利益が大きく落ち込んだが、これは一時的だと企業が考えれば、従来と同じ金額の配当を続け、その結果、配当性向が100%を超えることも当然にある。
この配当性向の分布を日本市場とアメリカ市場とで調べてみた(下図)。形状が異なることは一目瞭然だろう。 違いの1つは、アメリカの場合、無配もしくはそれに近い企業が多いことである。アマゾンやグーグルの例で示したように、「配当をするよりも成長を」との意識が強い。 もう1つの違いとして、日本の場合、配当性向30%付近に多くの企業が集まっている。無配でない企業だけを取り出しても、日本は配当性向30%に集中している。