金融バブル破たんの「ドラマ」はまだ終わっていない――ノンフィクション作家、清武英利さん
メディアの触角がとても鈍くなっている
――メディアが十分に機能していない。これは社会にとって危惧すべきことだと思います。 メディアの触角がとても鈍くなっていることは確かだと思います。新聞社はトップランナーであるべきですよ。週刊誌も調査能力が落ちている。週刊誌が騒いで新聞が呼応する、あるいは新聞が叩いて週刊誌が呼応する――。そういう作業が少なくなってきている。競争して刺激し合うことはとても大事だと思います。 トッカイをやって思うのですが、住専からカネを得て蓄財しているけしからん借り手がいる。でも、捕まってしまえば報道は終わりですよ。しかし、現実にはその後、延々と続くわけです。捕まったのは通過点にすぎない。(刑を終えて)出所したらまた始まるわけだから。だから、最初から最後まで継続して取材する記者がいてほしいですね。捕まると報道が絶える。それは違う。これは僕が新聞記者の頃から言っていることです。物事の本質をとらえるためには、「捕まればいい」あるいは「一罰百戒的に叩けばそれで終わり」という表層的な報道から、息の長い報道へと切り替えていってもらいたいのです。 中には気づいているのに気づいていないふりをする記者もいますよね。でも、そうした新聞記者は最初からそうだったわけではなく、上に言われて染まっていくんです。僕は、忖度記者は報道の世界から排除されるべきだと思っています。忖度記者になって出世していく奴もいるけど、記者は出世したらアカン(笑)。 (聞き手 フリーライター・三好達也) 【清武英利】きよたけ・ひでとし。1950年、宮崎県生まれ。立命館大学経済学部卒。75年に読売新聞社に入社し、社会部記者として警視庁、国税庁などを担当。中部本社(現中部支社)社会部長、東京本社編集委員、運動部長を経て、2004年8月より読売巨人軍球団代表兼編成本部長。11年11月、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を解任される。現在はノンフィクション作家として活躍、著書に『しんがり 山一證券 最後の12人』(2013年)、『石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの』(2017年)、『トッカイ(不良債権特別回収部) バブルの怪人を追いつめた男たち』(2019年)など。