京大出のロッテ田中が戦力外。なぜ京大、東大出身選手は成功できないのか
元ヤクルトのスカウト部長で遠藤氏が東大時に獲得検討したこともある片岡宏雄氏は、こう分析している。 「東大、京大の出身の選手は、高校時代から含めて絶対的な練習量、訓練が不足しているので、基礎体力がない。それとプロの水に合う、合わないという問題がたぶんにあると思う。遠藤の場合は、左のワンポイントとして期待値を含めて検討したが、東大という話題性を別にするとプロレベルにないという判断になって見送った。過去に東大卒のプロは5人いて、4人までは、その後、球団で仕事をしている。話題性に加えて、その頭の良さを買って、引退後はチームの指導者やフロントで仕事をしてもらおうという狙いも獲得する側には、最初からあったと思う。また東大、京大出の選手をもし成功させれば、文武両道のお手本として、球団として子供達に最高のモデルケースを作ることもできる。そういう狙いもあって東大、京大のブランド力を上乗せしてドラフトにかけているので、なかなか成功は難しい。田中は、京大卒にしては馬力があったので期待をしていたが、少し野球を考えすぎたのかもしれないね」 片岡氏の指摘通り、田中は「上ばかりを見て、考えすぎたんです。プロは学生時代に知らない世界でした。上にはこんなレベルの野球があるということを知った。そこまで自分がいかねばと」と口にしていた。 今秋のドラフトでは、東大の150キロ左腕、宮台康平が、上位にリストアップされているが、今度こそジンクスを打ち破ることができるのだろうか。 ただ東大卒プロ野球選手の引退後の進路については明るい。 新治氏は、本社のサラリーマン生活に戻った後に、球団顧問まで務め、井出氏は、コーチ、2軍監督として長らくユニホームを着てフロント入りしてからは球団代表まで任された。小林氏もソフトバンクの取締役として経営、編成にもかかわり、FA移籍を巡って物議をかもす舌禍などもあったが、現在は江戸川大の教授、及びコメンテーターとして活躍中。遠藤氏も、アメリカに研修留学してから、GM補佐としてオペレーション部門でフロントを支えている。 松家氏は、米国独立リーグ挑戦後に教職の免許をとり、故郷香川の県立香川中央高の教壇に立ちながら、同校野球部のコーチも務めている ロッテの戦力外となった田中は、3年前、「できるだけ長くやりたいです。10年、15年できれば最高です」と語っていた。一方、こうなることも予期していたのか、「引退すれば、アスリートのセカンドキャリアを手助けする事業を考えたい」とも言っていた。まだ25歳。今後の進路については、他球団でのプレー続行を模索するかも含めて未定らしいが、そのスマートな頭と経験は、今後どんな道へ進んでも生かされるはずだ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)