「紅麹」問題の原因はプベルル酸!? 食品機能学・大貫宏一郎氏に聞く情報リテラシーと健康寿命
未知の物質だからこそ積極的に試すという選択肢
新しい健康食品の成分や検査に対する恐れについても、大貫氏は独自の視点を持っている。 「未知の物質が怖いという人もいますが、私はむしろ未知の物質だからこそ健康成分が多く含まれていることを期待して、積極的に摂取するようにしています。例えば、味噌で言えば、赤味噌の方が白味噌よりも未知の物質がたくさんあるので、私は赤味噌を選ぶようにしています。味噌が体に良いということは明らかですからね。もちろん、これは個人の判断によるものですが、未知というだけで避けるのではなく、むしろ未知だからこそ積極的に試してみるという考え方も一つの選択肢だと私は思います」 最後に、健康寿命を延ばすための秘訣について聞くと、大貫氏は「ご自愛ください」という言葉を挙げた。 「自分の健康は自分が一番よく知っているものです。誰かに全て委ねるのではなく、自分でしっかり考えて、知識を身につけて対処していく、自分自身は自分で守るものだという意識が大切です。そもそも自分の体調の変化は、どんな高度な機械の検査値よりも、自分の実感のほうが早く気付けるものです。検査値が動く前に自分の実感が変わるほうが早いという科学的データもありますから」 健康に関する情報があふれる現代社会。私たち一人ひとりが、賢明な判断力を持ち、自らの健康を守る主体性を持つことが求められているのではないだろうか。大貫氏の言葉を借りれば「自分のことを一番自分で大事にする」ことが、健康長寿への近道なのかもしれない。 大貫宏一郎(おおぬき・こういちろう) 株式会社ユーザーライフサイエンス代表。食品の機能性(健康に対する有効性)を主に研究。京都大学農学研究科にて博士号取得、大塚製薬の研究員、京都大学医学研究科の特任助教、九州栄養福祉大学の講師、九州大学の特任准教授、近畿大学(福岡キャンパス)教授を経て現職。
取材・文:いからしひろき(きいてかく合同会社)