ホンダ、全固体電池のパイロットライン稼働へ…量産コスト下げる仕組みを構築
(写真:レスポンス)
ホンダは11月21日に栃木県さくら市に全固体電池のパイロットラインを建設したことを発表している。2025年には稼働を予定しており、2020年代後半に投入するEVへの搭載を目指している。 ホンダ全固体電池の特徴 全固体電池については、トヨタや日産も自社生産を表明しており、各社ともに2028年前後の実車への搭載を目指しているところだ。ホンダは、全固体電池の研究開発に約430億円を投資予定(うちNEDOによるグリーンイノベーション基金を約200億円活用)。ホンダ車への搭載時(2020年代後半)には、現状EV(液体リチウムイオン電池)の航続距離を2倍程度に延ばすという。電池サイズは、航続距離が同じなら現状(以下同前)より50%低減、コストは25%ほど下がるだろうとしている。 ホンダとしては、コストや性能面だけでなく、劣化や衝撃時の発火リスクを抑えられる安全性と、コバルトフリー電極など地政学的リスクからの脱却も可能だとする。 ホンダの全固体電池について、現時点で、量産品の詳細スペックは発表されていない。日産は最終的な目標値として1000Wh/kgを掲げている。ただし、市場投入直後は500~700Wh/kgあたりからになると予想されている。車両用途と各社の電池技術のロードマップを考えると、このあたりがターゲットになっていると思われる。 負極は日産と同じ金属リチウムを使用する。正極には弾性をもった(割れにくい)素材を活用し、電解質との密着を高める。電解質は硫化物系(日産、トヨタも硫化物系)を用いるとした。電解質については、パイロットラインで各種技術実証を行い、正極素材の選択自由度を広げる。将来的なリチウムフリーのバッテリーまで視野に入れていることになる。 パイロット工場のコンセプトは集約化・連続化・高速化 パイロット工場での新しい取り組みは、正極・固体電解質・負極の素材をフィルム等に塗布する工程を一体化したこと。液体リチウムイオン電池では、電解質が液体のため、正極と負極を張り合わせたあとに注液を行う。全固体電池では、電極素材と電解質素材をまとめてプレスする。このとき各素材(スラリー)は、混ぜ合わせる素材ごとに、複数のタンクで混錬される。ホンダのパイロットラインでは、この工程を同時並行する形でひとつのマシンで行う。 塗工工程では、正極塗工と絶縁層の塗工を1工程で行えるラインを開発した。ホンダでは間欠塗工製法と呼んでいるそうだ。電極と電解質が塗布されたシートはプレス工程を経てバッテリーセルのシートとなる。プレスはロールプレス方式を採用し、段階的に圧力を高めていくことで各層の均質な接合を目指す。
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レスポンス 中尾真二