「宇宙に住む未来って本当にくるんですか?」SLIM開発者とともに考える、月での暮らしと地球の課題解決のヒント
宇宙研究を通じて、地球上で暮らす際のヒントを得る
三菱電機は1960年代に宇宙事業に参画して以来、人工衛星をはじめ、衛星の運用に欠かせない地上管制設備や大型望遠鏡の開発まで幅広く事業を展開。シンガポールやトルコなど、海外商用衛星の開発にも携わってきた。 「弊社の宇宙事業では、地球を周回する人工衛星の開発や運用支援を主に手がけてきました。また、宇宙飛行士の水や食料、実験装置といった様々な物資を国際宇宙ステーション(ISS)まで運ぶ無人の宇宙船・宇宙ステーション補給機「こうのとり」(H-II Transfer Vehicle: HTV)の一部開発を担当し、すべてのミッションを遂行した実績もあります。そして近年は、宇宙分野の中でも月の探査に関する需要の高まりを受け、今回SLIM開発に携わることになりました」(清水さん) 一見すると、こうした宇宙事業というのは私たちの日常生活とはかけ離れた存在のように感じるもの。だが、人工衛星が天気予報やカーナビの運用に大いに役立っているように、宇宙と私たちの暮らしが密接に関わっている側面は少なくない。最後に北村さんは、宇宙や月での暮らしを考えることが、地球に住む私たちが現在直面している課題解決のヒントにつながる可能性について示唆してくれた。 「例えば国際宇宙ステーションでは、同じ目的の実現に向かって多様なバックグラウンドを持つ人が暮らしています。地球上では、紛争や戦争など何かしらの理由で仲が良くない国や地域同士の人々が、宇宙空間では互いに協力していることもありますし、そもそも宇宙には戦争は存在していない。こうしたことも、今の私たちが地球上でより良い生活を送るうえでのヒントになり得るように思います」 宇宙という厳しい環境、かつ限られた資源で生活するためのアイデアは、地球上での課題解決やサステナビリティ実現へのヒントとなり得るかもしれない。そんな視点をもって宇宙事業を捉えて見ると、地球では当たり前だと思われている思考から抜け出して、新しい仕組みや価値観を生み出せるに違いない。
取材:三菱電機イベントスクエア METoA Ginza "from VOICE"