全国ランキング35位の名字「村上」。その特別のルーツとは?
村上(むらかみ)
「村上」はメジャーな名字で、全国ランキングでは35位となっています。沖縄県以外に広く分布し、とくに愛媛県や広島県を中心に瀬戸内海周辺に多くなっています。 では、「村上」のルーツはなんでしょうか。 一般的に、「上」「下」のつく名字は方位由来です。「山上・山下」や「坂上・坂下」など、基本的には標高の高い低いで決まります。 川だと上流が「上」で下流が「下」となります。川の場合は「上下」と標高が一致していますが、そうでない場合もあります。道の場合は、都や中心地に近い方を「上」といい、反対側を「下」といいました。今でも、鉄道や高速道路の上り下りはこれに由来します。 「村上」も本来は「村の上手=町に近い方」という意味で各地にありますが、「村上」はこれとは別に特別のルーツがあります。 それが、信濃国更級郡村上郷(現在の長野県埴科郡坂城町)をルーツとする地名由来の「村上」です。ここには源平合戦で源義経に従ったという村上氏がおり、以来戦国時代まで栄えました。 そして、この一族は鎌倉時代には後家人となって各地に広がりました。中世に瀬戸内海を支配していた村上水軍もこの信濃村上氏の一族と伝えています。 現在、愛媛県と広島県に集中しているのは、この村上水軍の関係者の末裔の人たちが多いからだと思います。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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