そりゃ退屈も事故もないほうがいい、はず。けどいざなくなってみると世界は
中年ミュージシャンのNY通信。のはずが今回は東京滞在記が届きました。ジャムセッションのイベントを通して見えてきた日米の違い、それはなんだか安全安心快適なはずなのに息苦しい、われわれの暮らしを浮き彫りにしているようで……。 【画像を見る】史上最高のギタリスト250選 例年、日本に一時帰国した際には自分のライブをさせてもらったり誰かの出番に呼んでもらったりしてきたんだけど、今年は新しい試みとしてジャムイベントを主催してみました。 「ジャム」という言葉の射程はとても広範なのですが、私にとって馴染みのあるジャムというのはファンクやハウスやドラムンベースみたいなループ型の音楽をその場で生成していくスタイルで、スタンダード曲の演奏を主眼とするジャズ・フュージョン界のジャムセッションや、ポップス界のオープンマイクとはちょっと趣向が異なります。とはいえ即興音楽ほどアヴァンギャルドでもありません。 打ち合わせもなく提示されたループの種みたいなものを曲っぽい何かに育てていくので、どんなサウンドに発展していくのか、主催する私にも見通しが立ちません。加えてオーディエンス参加型なので、どんな技量の人どうしが合奏するのかもわからない。不確定要素しかない。それがおもしろいところです。 幡ヶ谷のフォレストリミットがクラブ営業を終えたあと、深夜0時からフロアを使わせてくれて、そんな無茶な時間にもかかわらず、ほとんど告知もしなかったのに楽器を持参したプロ/アマ混淆のミュージシャンで満員に埋まったので、東京ってのはすごい都市だなーというのがまずもっての感想なんですが、なんか来た人にやたら感謝されたんですよ。 それも「こんな音楽体験は初めてでした」とか「こういうのがいま東京に必要なイベントです」とか、だいぶ大げさだと思うんだけど、これまでの音楽人生でかけられたことのないような言葉で(これまで何だったんだ)。 そう言ってもらえるのはありがたいことだな、と素直に受けとるのと同時に、私はホンマかいな、とも思っていました。私が暮らしていた2000年代の東京にはまだ、渋谷のTHE ROOMやPLUG、池袋のマイルスカフェなんかにファンク系のジャムイベントがあったはず。話しかけてくれた若いミュージシャンの人にそう聞いてみたのですが、どうやら、いまはどこもやってないらしい。Lin Hayashiさん(私なんかとは次元が違う凄腕ベーシスト)が帰国時にレクチャー形式で開催してるくらいだ、と。 でも待てよ。私最近、インスタでとあるジャム動画を見かけたことがありました。そのイベント名を言ってみると「あれはもともとブッキングされたプロミュージシャンが参加していて、オーディエンスは見るだけなんです」との答えが。ちょっと様子がわかってきました。