一風堂や山頭火が頼る「製麺企業」の波乱なドラマ 稲盛和夫さんから教えてもらった大切なこと
博多とんこつラーメンの人気店「一風堂」がニューヨークに1号店を出しラーメンブームに火がついた年の2008年、大手食品卸会社がサンヌードルの商品の取り扱いを決めたことで、出荷量がそれまでの20倍に拡大。全米の飲食店や小売店へと流通網が一気に広がった。 特注麺はその後、アメリカ国内の一風堂(本店などを除く)や、一幸舎、山頭火など有名店でも使われるようになる。 ■虚無感を感じていた中で見つけた言葉 一方、同じ頃、夘木さんは、ある心境の変化を感じ始めていたという。
「こんな経営で本当にいいのだろうかと、不安を持つようになっていました。でも、借金の返済はできているし、従業員も生活できている。やっていることは間違っていないと、自分に言い聞かせていました」 不安とは、何を手に入れても満足しない、「虚無感」に襲われるようになっていたことだった。 「ビジネスが大成功したら高級住宅街に住めるかもしれない、高級車を持てるようになるかもしれない、そんな夢が膨らんでどうしようもなくなるほど、わたしは物欲が強いほうでした。
雇った友人にも『俺がフェラーリを買ったらお前もベンツくらい乗れ』、なんてかなり狂ったモチベーションの与え方をした時期もあったり。ところが、いくら物欲が満たされても嬉しくない、感謝もない。虚しく、病的な感覚になっていた頃でした」 そんなある日曜の午後、自宅で寝転がっていると、視界の端にこんな文言が飛び込んできた。 「足るを知る」 「なんのために生まれてきたのか」 経営の神様・稲盛和夫氏が手がける「盛和塾」の案内パンフレットに書かれた言葉だった。
ハワイ在住の経営者から勉強会に誘われていたが、「何を今さら勉強する必要があるのか」とまったく興味がわかず、放っておいたものだ。 だが、たまたま目にした一言一言は、「デタラメな自分」を明らかにし、それまで考えたこともなかった「大事なこと」を、まっすぐに突きつけられた思いがしたという。 「どれも道徳的なことでした。自分がこの世に生まれてきた理由、今やっている仕事の目的がまったく違うところにあるのだと感じて、なぜか、ものすごくほっとした気持ちになったことを今でも覚えています」