文字で読めば分かるのになぜか英語が聴き取れない。その理由は<理解の速度>にあった…鳥山明さんの訃報を伝えたBBCのニュースを事例にアドバイス
◆ポイント(1)-カタマリで捉える take…by storm「…を嵐に巻き込む、…をたちまちとりこにする」という熟語が使用されていますね。 もちろん、その知識があればここを聞き取って意味を理解することは十分可能です。しかし、もう一歩踏み込んで、この表現のtakeの目的語にはthe world「世間、世界」やthe…world「…界」といった語がくることが多いというところまで理解しておくと、聞き取りが一層楽になります。 take the world by stormを「世界をたちまちとりこにする、世を席巻する」という意味の1つのカタマリとして捉えておくということですね。 『英語の読み方 リスニング篇』の第4章の内容でも触れたことですが、高頻度で使用される大きなカタマリの知識を増やしていくことが聞き取りの正確さを高めることに大きく貢献します。
◆ポイント(2)―機能語の弱形 ここはbeenの音に注意したいところ。 『英語の読み方 リスニング篇』の第2章でも言及した通り、冠詞や助動詞(beやhaveも含む)など文法関係を表す機能語には強形と弱形の発音パターンがあり、特に後者は多くの学習者が想定している音と異なることがあります。 beenについて言うと、bean「豆」と同音の強形とbin「容器」と同音の弱形がありますが、ここでは後者の発音となっているため、前者のイメージしかないと戸惑いを覚えるでしょう。 文字で見れば知っている単語ばかりなのに全く聞き取れなかった、というような場合、この機能語の強形、弱形の問題がからんでいるかもしれません。
◆ポイント(3)―構造の「先読み」 (3)は直前で、『ドラゴンボール』が完璧な形で世界に広まった、と説明しているのを受けて、それがどういう結果につながったかを説明している箇所です。 述語動詞のhas led toに注目しましょう。lead to…というのは「…に結びついた」と結果を表現する言い回しですから、「…」の部分には個々のものや人物よりも「何がどうする」という意味内容を持った「出来事」がくるのが自然です。 しかし、toはあくまで前置詞なので、後ろにthat節などを持ってくることはできません。このため、「…」の部分には「意味上の主語+動名詞句」の形が非常によく登場することになります。 こういった知識を生かすと、has led toの時点で後ろに出来事を表す内容がくるのでは、とある程度予想がつくため、it becoming…の部分も戸惑うことなく、スムーズに it(意味上の主語) becoming(動名詞句) という分析ができ、「『ドラゴンボール』が世界中で人気になることに結びついた」と解釈できるわけです。 【訳例】 本作は1980年代、1984年に登場し、日本で成長しつつあった漫画やメディア市場に完璧にマッチしていたためにすぐにアニメ化されました。有名なのは『ドラゴンボールZ』で、世界を席巻したアニメの第2部に当たるものです。漫画のほうは今では、21以上の国に持ち込まれ、それぞれの言語に翻訳されています。また、アニメは元々36ヵ国で放送され、完璧な形で世界に広まっていった歴史があります。その結果として、本作品は世界中で人気が出ただけでなく、日本国内外で一大フランチャイズとなっています。現在、長編アニメ映画は17作ほどあり、漫画の売り上げだけでも約1億6000万部に達しています。
北村一真