「最強生物クマムシ」は月面で異常繁殖して怪獣化する?
月面で生物は生き延びられるのか?
クマムシ以前に、そもそも月面で生物は生きられるのでしょうか? 結論からいえば、地球に住むいかなる生き物も「月の表面」で、「何の防御装置もない状態」で、「呼吸したり、餌を食べたり、繁殖したり」することはできません。その理由は、地球型のすべての生き物が共通に持つ「生きるための仕組み」にあります。 地球型の生物は「炭素原子を骨格とした、複雑で多種多様な分子(有機物質)の相互作用」をベースにしています。乱暴に例えると、生き物の細胞の中では、何万種類ものレゴブロックのような分子がゆらゆら動いており、ブロック同士がくっついたり離れたりするたびに、エネルギーが生まれたり情報が伝えられたり、新たなブロックが製造されたりしているのです。細胞が「生きている」状態とは、このエネルギー・情報・物質のやり取りが絶え間なく続いている状態のことをいいます。細胞の中でこの3つの要素のやり取りを続けるためには、何よりも無数の分子がゆらゆらと動き回れることが重要です。 「ゆらゆら」状態のおかげで、分子同士は速すぎず遅すぎず、ちょうどいいスピードでぶつかり合い、複雑な仕事をこなすことができるのです。分子同士の衝突速度が遅すぎれば反応が起こりませんし、速すぎれば木っ端みじんに分解してしまい、とても複雑な仕事はできません。このゆらゆら状態を支えているのが「液体の水」です。生命を支える分子は、水の中でゆらゆら浮遊していなければ、正常に働くことができないのです。 しかし、月面には液体の水は存在しません。仮に生き物を裸の状態で月面に放置すれば、日なたであればあっという間に体液が蒸発してミイラになり、日陰であればある程度体液が蒸発した時点で凍り付いてしまうでしょう。乾燥状態も凍結状態も、細胞の中の分子がゆらゆら動くことができないという点では同じです。したがって、月面でアクティブに生活することができる生物(少なくとも地球型生物)は存在しないのです。