「気付いたら髪が抜けていた」。〈 円形脱毛症 〉本当に知ってる?全身の毛が抜けることも。誤解や偏見の多い病【専門医監修】
「ヘアロス」という言葉を知っていますか? 言葉通り、脱毛症などで髪の毛を失うことを指します。よく耳にする「円形脱毛症」は代表的な脱毛症のひとつで、誤解や偏見の多い疾患でもあります。髪だけでなく全身の毛が抜けてしまうこともあり、治療が難しい疾患です。 【 表 】ホルモン補充療法(HRT) の治療薬 ヘアロスは外見に大きく影響することから精神的ダメージも少なくありません。当事者は生きづらさを抱えていたり、周囲に伝えづらくひとりで悩んでいる場合が多いのが現状です。円形脱毛症について、脱毛症外来のある東京医科大学の入澤亮吉先生に伺いました。 【ヘアロス #4】
円形脱毛症とは? 全身の体毛が抜けてしまうことも
円形脱毛症は、頭髪などに”円形の脱毛斑(脱毛がみられる部位)”ができる病気です。「10円ハゲ」をイメージする方が多いでしょうが、小さな脱毛斑だけが円形脱毛症ではありません。小型の脱毛斑が1個だけの「単発型」から、頭髪全体あるいは全身の毛が脱落してしまう「重症型」までさまざまなタイプがあり、症状によって分類されています。 ●単発型 小型の脱毛斑が「1個のみ」のもの。多くは放置しておいても自然治癒します。 ●少数多発型 脱毛斑が「複数」で、脱毛斑の脱毛範囲が「25%未満」の症例に適用される病名。 ●多発型 脱毛斑が「複数」で、脱毛斑の脱毛範囲が「25%を超える」もの。 ●蛇行型 頭髪の生え際に、帯状に脱毛を生じるもの。難治。 ●全頭型 脱毛の範囲がおおむね「全頭」、長期間症状が固定しているもの。 ●汎発型 脱毛の範囲が「全頭以外にまゆ毛、まつ毛を含めた全身」に拡大し、長期間症状が固定しているもの。 ●急速進行型 急速に全頭から脱毛が始まり、短期間に脱毛範囲が全頭に及ぶもの。その後急速に回復傾向に向かうことも少なくない。
円形脱毛症の原因は? ストレス? 実は「原因不明」
円形脱毛症の原因は、いまだにはっきりとしていません。毛球部に対する「自己免疫疾患」と言われています。本来はからだを守る免疫の働きが異常をきたし、リンパ球が自身の毛包を攻撃してしまうことで毛が抜けてしまうと言われています。 円形脱毛症は人口の0.1~0.2%に発生すると言われ、一生のうちに円形脱毛症になる確率は1.7%。男女差はほとんどなく、どの年齢層にも発症します。親子や兄弟姉妹で発症することも。 まれに難治化し、頭髪だけでなく、まつげやまゆ毛、その他全身の毛が抜けることもあります。円形脱毛症は橋本病などの甲状腺疾患、尋常性白斑、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患が合併することもあります。また、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎といったアトピー疾患を合併することも知られています。 ストレスは「原因」ではなく、「誘因」のひとつと推定されています。肉体的疲労や感染症も一種のストレスですが、誘因のひとつと考えられます。一方、精神的ストレスが円形脱毛症の誘因になるかどうかについては賛否があるところです。「自分が弱いから」と自身を責め、一層つらくなる人もいるようですが、そのような無駄な考えは捨てましょう。 【前編】記事では、「円形脱毛症」の種類と原因について紹介しました。 続く【後編】記事では、「頭皮に注射」⁉ 特定の免疫を抑える新薬も!「円形脱毛症」の治療法ついて紹介します。 ※日本皮膚科学会「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」に基づいた診療 ※病院によって、治療法が異なることもあります 監修: 東京医科大学病院皮膚科、ワタナベ皮膚科 入澤亮吉先生 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本性感染症学会認定医。日本皮膚科学会東京支部代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員、日本褥瘡学会評議員。1988年東京医科大学卒業。同大学病院皮膚科病棟医長を経て、2021年より東京医科大学病院皮膚科 講師。特定非営利活動法人 円形脱毛症の患者会 監事
オトナサローネ編集部 木村美穂