真田広之、エミー賞で見せたタキシード姿の秘密 「自分らしく」がハリウッド流
■若き時代劇のアクションスターから演技派俳優へ
とはいえ、筆者の世代はやはり真田広之氏といったら、1980年代に映画「里見八犬伝」で薬師丸ひろ子ちゃんを後ろに乗せて馬にまたがって夏木マリ氏の玉梓（たまずさ）の怨霊と戦ったり、テレビドラマ「影の軍団」シリーズで師匠であるサニー千葉こと千葉真一氏演じる服部半蔵の手下の忍者で木につるされたり水にとびこんだりしていた、時代劇アクションスターの真田広之氏である。 アクションスターだった真田広之氏が演技派俳優になった転機の作品といえば、イラストレーターの和田誠氏が監督した映画「麻雀放浪記」（1984年）である。 しかし筆者からしたら真田広之氏といえば、テレビドラマ「高校教師」（1993年）ですね。若き高校教師と生徒の道ならぬ禁断の愛の関係を描いた放映当時は社会現象を引き起こした大ヒットドラマで、最終回で列車のシートに座って赤い糸で指を結んだ真田広之氏演じる高校教師の羽村と、桜井幸子氏演じる生徒の繭が心中したように眠るラストシーンが話題になった。
■お洒落だった「高校教師」 印象的なラストシーン
ドラマ「高校教師」の真田広之氏の格好が実にお洒落（しゃれ）なのである。運動の苦手な真面目な高校教師で、普段からネイビーブレザーに白いシャツにレジメンタルタイでグレーのパンツにステンカラーコートというアイビーな格好やグレーのジャケットに白いシャツ。最終回のラストシーンでは、ウールのコートにジョンスメドレー風なグレーのタートルネックのハイゲージニットに茶のパンツをはいている。 テレビドラマと時代劇に詳しいコラムニストのペリー荻野氏が、以前に真田広之氏をインタビューした時に手の甲に小さな傷をいくつか見つけたそうだ。それは時代劇で十手を持って戦う時にリアルに演技するためにできた傷なのだそうだ。 第一印象は「めちゃくちゃ色気がある」。色気といっても、自らアピールするとか語るわけではなく、そこはかとなく漂う色気であったと語っている。グレーのタートルネックにコートを着た、ちょっと映画「太陽がいっぱい」の若い頃のアラン・ドロン氏を彷彿させる「高校教師」の真田広之氏もまさにそうだ。 国際的なハリウッドスターになった日本が誇るサムライジェントルマン、真田広之氏。たまには日本に帰ってきて、ベタな恋愛ドラマやコメディードラマ、王道の時代劇に出演する真田広之氏もぜひまた見たいでござる。
いであつし
ライター、コラムニスト。1961年静岡生まれ。コピーライターとしてパルコ、西武などの広告を手掛ける。雑誌「ポパイ」にエディターとして参加。大のアメカジ通として知られメンズファッション誌、TV誌、新聞などで執筆。「Begin（ビギン）」、「LaLa Begin（ララビギン）」などで連載コラムを持つ。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。
