〈箱根駅伝・早稲田復活へ〉花田勝彦監督がつくる「強い早稲田」への道…「監督就任後、まず最初に“練習メニューを白紙”にした」理由とは
休むことも大事な練習の1つ
疲労回復の大きな要素の1つである睡眠時間が明らかに足りていないように感じた。そこで、土日は思い切って朝練習をなしにして、ゆっくり寝かせて、午前もしくは午後の本練習1回のみにした。 また、合宿所では1年生が朝4時台に起きて当番の仕事をやっていたが、これも寮監の方や学生幹部とも相談して遅くし、長距離に関しては朝練習に遅れて参加しても構わないかたちにした。 競技者としての経験や指導者となってからの体験で、強い選手になるためには、「練習」「栄養」「休養」の3つの要素を、正三角形に近づけることが大切だと感じていた。 いくら良い練習ができても、十分な栄養補給と休養を怠ればケガや体調不良につながり、自分が描いていたようには成長できない。 早稲田には真面目にコツコツ取り組む選手が多く、放っておくとやりすぎてケガをしたり、オーバートレーニングになったりする者が多い。 そうした選手には、「休むことも大事な練習の1つ」と伝えている。 * 監督が変わるということは体制も変わるということだ。 それにともなって変革も起こるが、割とみんな素直に受け入れてくれたように感じた。選手たちも、なかなか結果が出なくて、藁にもすがる思いだったのかもしれない。 そのほかにも変えた点はたくさんある。 競走部のホームページは、これまではOBの方が長年、ボランティアで運営してくださっていた。 情報量豊富で、実は私も早稲田の選手情報を集める際にはとても重宝していたが、これも予算を組んでスマートフォンでも見やすいデザインに一新した。 いちばんの狙いは、より多くの高校生に見てもらって、勧誘につなげるためである。 また、選手勧誘に行った際に、大学のパンフレットと一緒に渡せるように、競走部オリジナルのパンフレットを作成した。 今はデジタルの時代だからと反対もあったが、いざ作成してみると、その場で説明しながら手渡しすることができ、またシンプルながらかっこいいと好評だった。 さらに、これまでの早稲田大学の伝統を考えると大きな決断だったが、競走部監督の大前祐介君とも相談し、公式ウェアを今の時代に合わせて学ランからオーダーメイドのスーツに変えた。 メーカーの方と相談し、就職活動でも着用できるデザインを採用して、ネクタイは一目で早稲田とわかるエンジのバーズアイ(鳥目織り)にした。 練習で着用するウェアにもこだわっている。 メーカーだけに任せっきりにせずに、実際に展示会に足を運んで、いろいろな素材や形状を手に取り、より最適なものを見つけて、打ち合わせするようにしている。
---------- 花田勝彦(はなだ かつひこ) 1971年京都市生まれ。滋賀県立彦根東高校を経て早稲田大学人間科学部へ。3年時には箱根駅伝に総合優勝、4区区間賞(区間新)を獲得。1994年エスビー食品陸上部へ進み、1996年アトランタ五輪で10000m、1997年アテネ世界陸上でマラソン、2000年シドニー五輪で5000m・10000m日本代表。2004年に現役引退。引退後は上武大学助教授・上武大学駅伝部監督、GMOインターネットグループ陸上部監督などを歴任。2022年6月より早稲田大学競走部駅伝監督に就任。 ----------
花田勝彦