はやぶさ2、今後の運用は? JAXA会見(全文1)28~30日に次回運用
降下中止にいたった原因
その原因なんですが、ノーマルアボートの原因なんですが、このあと詳しい話が出ますけれども、LIDARの距離計測に問題が生じたためと判明しました。その対策についても今回検討したということになります。さらにターゲットマーカ投下はですからできなかったんですが、人工クレーター付近の低高度撮影は成功しましたので、今日画像を2枚ほどお見せしたいと思います。 次のページ、8ページ目がそのグラフなんですが、今言ったことと同じことです。途中のこの赤い線、実際の経路と、この図でいきますとここに書いてありますが、ここの根元のところ、ここが日本時間の16日11時25分、これ機上の時間で25分ですけれども、高度約50メートルでアボートをしたということになるので、ここのLRFとか、その次のターゲットマーカの分離が今回はできなかったということになります。探査機のほうはそのまま上昇しまして、ホームポジションに戻ったということになります。では次のページからは津田のほうからお願いします。
高度値異常を検知し、降下を中止して上昇
津田:じゃあ9ページから私、津田のほうからご説明させていただきます。あらためまして今日はお越しいただきどうもありがとうございます。それで、PPTD-TM1と呼んでいる運用で、ノーマルアボートという状態が発生したと申し上げました。これは事象としては、高度計測をしているLIDARという装置がありますけれども、これが高度値異常を探査機が自動検知して、これはおかしいということで探査機が降下を中止して自動的に上昇に転じたということになります。 ノーマルアボートっていうのは、探査機の中の安全システムのうちの1つでして、軽微な異常の際に自動的に探査機がそれを検知して発動されるモードです。例えば一部のセンサー出力が異常だと探査機が判断したときに、自動的に発動されるというものです。 今回はLIDARが高度値異常を出力しました。これは今回、50メートルという高度でそれが発生しているんですけれども、ちょうどその50メートルを通過するときにわれわれ設定していたことがありました。これはLIDARのレーザー光、これが、探査機が小惑星表面に近づいていくとレーザーを打って、その反射の時間から距離を測っているんですけれども、その反射する光がどんどん表面が近くなると強くなります。 その強くなることに応じて、レーザーの受信感度というのを調節するためにいろんな設定を探査機に仕込んでいます。ちょうど50メートルというのはその切り替えを行うタイミングでした。その切り替えを行ったタイミングでノイズデータが混入したために、LIDARが本来とは異なる高度を出力した。こうなりますと、探査機のセンサーとしてのLIDARですね、LIDARの出したものが上位にある誘導制御系、コンピューターなんですけれども、これがそんなのはおかしいと。その値はおかしいと判断して上昇したということになります。 今まで起きていなかったことがこれは今回初めて発生しています。それは今回50メートルで受信感度を調節するというのを今回初めて設定したからということです。これも理由がありまして、これはタッチダウン1ですね、1回目のタッチダウンうまくいきましたけども、このとき実は想定よりも探査機の誘導制御、タッチダウン精度が非常に良くて、LIDARのレーザー光がターゲットマーカを撃った可能性があるということが分かっています。 これはターゲットマーカってぴかぴかに光るお手玉ですので、これにレーザー光が当たってしまうと強い反射を返してくるので、LIDARが目を回すかもしれないという恐れがありました。