夏の冷酒を格別に演出 手磨きにこだわる江戸切子職人・清水秀高さんの技
江戸切子の伝統を残していくために
他の伝統工芸と同様に江戸切子も後継者不足が深刻だ。工房や販売店によって構成される江戸切子協同組合の調べによると、主要産地である江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区の4区を合わせた工房の数は、約30年前の1985(昭和60)年と比較しても112カ所から54カ所へと半減している。 しかしその一方で、東京スカイツリーや東急プラザ銀座に江戸切子のモチーフが使われて若い世代に関心を集めるなど、明るい兆しも見られる。制作体験などを通じて振興に努めている清水さんは、江戸切子に触れる“入り口”を作っていきたいと語る。 「よく『一点物だから価値がある』と言われることもあるのですが、同じものを正確に早くたくさん作るのもプロの仕事だと思っています。『江戸切子は高いもの』という先入観を持たれてしまったら、新しい人になかなか手に取ってもらえない。確かな品質のものを求めやすい価格で届けて、そこが江戸切子を深く知ってもらうきっかけになればと思っています。」 修行時代に師匠から常々言われていたのは、「この商売で食っていくなら、10年で独立しなさい」という言葉。清水さんもいずれは工房を大きくして後進を育てていきたいと語る。手仕事による江戸の伝統は、次の世代へと確かに繋がれていく。 (鈴木 翔)