大同特殊鋼が工具鋼値上げ。労務費・外注費・輸送費上昇に対応、4月契約分から3~10%
大同特殊鋼は工具鋼製品について、国内向け・輸出とも全ての顧客を対象に4月契約分から3~10%の値上げを実施する。労務費や外注費、「物流2024年問題」に伴う輸送費の上昇が避けられず、今後もさらなるコスト上昇が想定される状況となっている。需要家各社へ継続的な安定供給を行うためにも再生産可能な価格水準への是正が必要と判断した。 工具鋼のベース値上げは、2023年4月契約以来となる。主原料の鉄スクラップや各種資材の価格は高止まり状態が続くが、今回の値上げは原燃料コスト影響ではなく、労務費・外注費・輸送費の上昇を価格に反映する点が従来と異なる。モリブデン、バナジウム、タングステン、コバルトの4原料を対象とする合金原料サーチャージ制は従来通り継続する。 値上げ幅に開きがあるのは製造プロセス、輸送距離の違いや鋼種間の価格差による。今後の鉄スクラップや合金鉄などの原料市況、エネルギーや諸資材価格の変動、労務費、輸送費などの上昇、為替の影響を注視し、状況によってはさらなる価格の見直しを行う方針。 主要需要先の金型業界や(金型業界向けに販売する)工具鋼流通業界では「数量減に加えて価格交渉に苦慮し、収益低下で疲弊している」との声が上がる。一方、金型ユーザー産業の一つである鍛造業界では「副資材である金型費の値上げ転嫁は原材料費や電気・ガス費ほど進んでいない」という声が聞かれる。 大同特殊鋼は工具鋼流通を含む金型関連産業の状況を危惧し、「中小企業が多く、製造業全般を支える重要な産業である」と指摘し、サプライチェーン全体の価値認知に向けて幅広い理解活動を粘り強く進める構え。