私にとっては、今のところのベストEクラス モータージャーナリストの高平高輝が新型メルセデス・ベンツEクラスのオールテレインに試乗 これぞEクラス!
パキパキ鋭すぎない、穏やかな挙動がメルセデスらしい!
先代からラインナップに加わったEクラスとしては新参者のオールテレイン。ワゴンをベースにSUVテイストを盛りこんだ外観が最大の特徴だ。Eクラスの中ではちょっと異端児みたいなモデルだが、乗るとこれが……。モータージャーナリストの高平高輝がリポートする。 【写真30枚】Eクラス唯一の4WDモデル、オールテレインの詳しい写真を見る ◆Eクラスの4WDモデルはオールテレインのみ 年明け早々に発売された新型Eクラス・シリーズ(セダン/ステーションワゴン)に意外に早くオールテレインが追加された。先代モデルで登場したEクラス・オールテレインは、ステーションワゴンをベースに車高を上げて、ある程度の悪路走破性も備えたSUV風味のワゴンである。パワートレインは2.0リッター4気筒直噴ディーゼル・ターボ+9段ATの4マチックで、今のところEクラスの4WD(4マチック)モデルはこれのみ、ディーゼル・ターボ+4マチックの組み合わせもオールテレインのみになるという。 車高を上げて、とは言ったが、実のところオールテレインの最低地上高は145mmでほかのモデル、例えば後輪駆動のE220dステーションワゴン・アバンギャルドと同一である。今回のモデルチェンジでわずかに大きくなったE220dステーションワゴンの全長×全幅×全高は4960×1880×1470mm、ホイールベースは2960mmというもの。それに対してオールテレインはホイールアーチの控えめなクラッディングとタイヤサイズの違いで、全幅が10mm広く全高が25mm高くなっていることが分かる。ただし、オールテレインには可変ダンパーとエアサスペンションが標準装備され、オフロードモードが備わる上に任意で車高を上げることが可能だ。車両重量はE220dワゴンの1930kgに対して2020kgとされている。またインフォテインメント・システムは第3世代のMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザーエクスペリエンス)システムを内蔵するMBUXスーパースクリーンをはじめとするインテリアの仕立てもほかのモデルと同一だが、オフロードでの車両周囲の路面状態を合成バーチャル映像で確認できる「トランスペアレントボンネット」機能が備わっていることが特徴である。 ◆メルセデスらしい挙動 エンジンのスペックは197ps/440Nmで、E220dワゴンのものとまったく同一。新型の6代目Eクラスは全車いわゆる電動化されており、このオールテレインもトランスミッション内蔵のISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を備える48Vマイルド・ハイブリッドである。そのおかげで、始動は非常に静かで滑らかだ。ブン、と一度回転が上昇してアイドリングに下がるのではなく、静々と持ち上がってアイドリング回転に落ち着く。そのため渋滞の中でのエンジン始動/停止がまったく煩わしくない。ちなみにアシストモーター出力も従来型の20psから23psに若干強化されているという。そのせいか、動き出しは身軽で非常に扱いやすく、さらに実用域での豊かなトルクのおかげでどんな場面でも物足りなさとは無縁、ドライバビリティは優秀である。 しかもパキパキ鋭すぎない、穏やかな挙動がメルセデスらしい。というか、試乗会で試したコンベンショナルなサスペンションを備える他のEクラスが、ほぼすべて低速では律儀すぎるほどに路面のデコボコを拾い、ややフラット感に欠ける乗り心地だったのに対して、エアマチック・サスペンションを備えるオールテレインからは、これこれ、これがEクラスだよ、と口に出したくなるようなしなやかさと落ち着きが感じられた。試乗会に用意されていたEクラスのほとんどが走行100kmにも満たない新車で、さらにAMGラインパッケージを装着していたことを勘定に入れる必要はあるが、オールテレインは悪天候も路面も気にすることなくどこまでも走っていける安心感にあふれている。高速道路を流していると燃費表示が20km/リッターに届きそうなことも(航続距離は1000km以上と出た)まことに心強い。 E220dオールテレインの車両価格は1098万円と、E220dステーションワゴン・アバンギャルドよりも140万円ほど高価だが、エアサスペンション&可変ダンパーと4マチック・システムは現状このオールテレインでしか手に入らない。山道での鋭いコーナリングや瞬発力よりも長距離での平均速度の高さ(快適性も含めて)を重視したい私にとっては、今のところのベストEクラスはこのオールテレインである。 文=高平高輝 写真=宮門秀行 (ENGINE2024年7月号)
ENGINE編集部
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