アギーレジャパンの4-3-3は機能するのか
ザッケローニ前監督は前線からプレスをかけて相手のボールホルダーをタッチライン際に追い込み、数的優位を作った上でボールを奪取するスタイルを選手たちに求めた。攻撃のリズムはボランチの遠藤保仁(ガンバ大阪)が差配し、本田圭佑(ACミラン)や香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)らの2列目が積極的にゴールに絡んでいった。 アギーレ流はインサイドハーフとアンカーの3人が連動して相手をはめて、基本的には1対1でボールを奪った瞬間から攻撃がスタートする。練習を見る限りでは、攻撃の基本は両サイド。右からならば右サイドバック、インサイドハーフの右、右のウイングのいずれかがクロスを上げて、ゴール前に入っていく人数を多くする。 ルーキーながらアギーレジャパンに抜擢された現役の慶応ボーイ、FW武藤嘉紀は所属するFC東京と同じ左ウイングを柿谷曜一朗(バーゼル)と争うが、チームでは左からドリブルでカットインしてから右足でフィニッシュに持ち込むパターンを得意としている。 攻め上がって左足でクロスを上げる経験はほとんどないが、憧れてきた日本代表で生き残るために、自身をさらにレベルアップさせるための青写真を早くも描いている。「クロスを磨かないといけないですね。どちらかと言うとえぐっていきたいけれども、相手が強くなれば、そういうことばかりもできなくなる。そういうときに左足からのクロスも重要になってくる」。 指揮官から「4‐3‐3」というテーマを与えられた選手たちが練習を積み重ねながら考え抜き、各々がテーマを見つけて意識を高めていく。選手たちの自主性を、何よりも戦う姿勢を、アギーレ監督はいわば「無手勝流」で臨んだ短期合宿の中で見極めているのかもしれない。 もちろん、ホームで戦う以上は、日の丸を背負っている以上は常に勝利を目指す。ジャージー姿で会見に臨んだアギーレ監督は、強敵ウルグアイ代表に対して「非常にタフな相手」と敬意を払った上で、初陣にかける強い気持ちを言葉に込めた。「ウルグアイを恐れる必要はない。我々は準備期間も少ないが、それでも勝ちに行きたい。明日は素晴らしいスタジアムが満員になる。走らない、戦わない、競争しないという言い訳はできない」。 アギーレ監督は年内に行われる6試合を、来年1月のアジアカップに臨む選手選考へのテストと位置づけている。選手たちの適性を見定めながら、ワールドカップで2度の優勝を誇る強豪からの金星奪取も狙う。貪欲なまでに二兎を追い掛けながら、4年後のロシア大会へ向けた第一歩が北の大地で刻まれる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)