防衛省と外務省の職員は「マイナ保険証」が“嫌い”?…自治体でもほとんど活用されず、会計検査院にも「ムダ」と烙印を押された理由とは
会計検査院が「マイナンバー関連の情報システム」の“ムダ”を認定
第二に挙げるのが、会計検査院が2024年5月15日に発表した非常に興味深い調査結果です。それによると、全国の自治体ではマイナンバー関連の情報システムがほとんど使われていないことが判明しました。 会計検査院とは、国や地方自治体などの予算が適切に執行されているかを検査する政府の独立機関ですので、湯水のように税金を投入してさまざまな機能を開発したのに、ほとんど使われずに無駄に終わっていると公式に示したことになります。 以下に、調査結果を具体的に紹介しましょう。 この調査は460の自治体などに対し、マイナンバー関連の情報システムの1258機能の利用度を調べたものです。 結果、調査対象の自治体などの半数以上が活用している機能は、1258機能のうち、わずか33機能(比率にして2.6%)でした。 逆に、利用率が10%未満の機能は1134機能(90.1%)もあり、利用が「ゼロ」の機能に絞っても285機能(38.6%)と、ほとんど使われていません(【図表】参照)。 活用しない理由として「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」「添付書類を出してもらったほうが効率的」「かえって余計な作業が増える」という声があがっています。
現場の事情に配慮しない、間違った「デジタル化」
2024年5月15日付の朝日新聞の記事に現場の事情のよくわかる声が載っています。以下、引用します(2024年5月15日付 朝日新聞デジタル)。 「指定難病患者への医療費支給の手続きを担う同課には年間約1万3700件の申請がある。しかし、業務でマイナシステムを使わず、申請者には医師の診断書や住民票、課税証明書などの書類を提出してもらっている。 設計上、マイナシステムで入手できるのは必要書類の情報の一部だけで、システムを使ったとしても紙で書類を受ける窓口業務はなくならない。そのため、従来の窓口業務に加えシステム対応の作業が純増することになってしまう。 また、システムによる照会では必要情報が届くのに数時間から1日以上かかり、作業効率が下がるという。先行導入した他県からは、エラーが出て情報入手できず、申請者に紙提出を求め直すなど業務量が増加したとの情報も入っており、導入すれば人員が足りなくなる可能性があるという」 業務を見直さず、従来の業務のまま、その上にマイナシステムを入れただけなので、このような問題が生じています。 マイナシステムを使うためだけに、何の価値も生まない業務が大量に発生し、多発するトラブルの対応に追われて膨大な時間が浪費される。まさに、間違った「デジタル化」の典型的な事例です。
北畑 淳也(哲学系ゆーちゅーばーじゅんちゃん)