『スター・ウォーズ』日本初公開日記念!その誕生の裏側を河原一久が読み解く【全4回―③】
アートは国境を越え、新しい形に…
実のところ、こうしたアーティストたちによる交流こそが、アート作品の発展と多様化を推進してきたのである。たとえばルネッサンス期のイタリア美術をフランスの画家たちが模倣し、古典主義がロマン派、バルビゾン派などに発展していくと同時に、印象派に始まる新たな時代が幕を開ける。それは産業革命とともにやってきた情報の流通による知的刺激の増加、そしてサロンから異端児扱いされたはぐれ者たちの反骨精神がもたらしたものだった。 そしてパリで酷評された印象派も大西洋を渡り、新大陸アメリカで絶賛されたことで市民権を獲得していったという事実もある。同時期にパリを席巻した「ジャポニズム」、特に浮世絵が与えた影響も然り。アートは国境を越えて刺激を与えあい、融合し、新たな形を生み出していくのである。 前述したようにルーカスは子ども時代に『フラッシュ・ゴードン』や『バック・ロジャース』などに夢中になった。そして商業監督デビュー作「THX-1138」の興行が失敗に終わった後には、「興行的成功こそが監督としての未来を約束する手形となる」ことを痛感し、誰もが共感できる娯楽作の製作に乗り出す。 まずは自らの青春時代を過ごしたモデストでの思い出を「アメリカン・グラフィティ」としてまとめ、記録的大ヒットを成し遂げるが、その製作と並行してルーカスは次に監督しようと考えていたSF娯楽作品のリサーチも始める。その一端は本書にも記述があるジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』で、他にもバロウズの「火星シリーズ」、E・E・スミスの「レンズマンシリーズ」などもあった。フランク・ハーバートの『デューン 砂の惑星』も参考にし、特に高価なスパイスが取引されているという設定を取り入れたことも知られている。 第4回(最終)へ続く……
「ルーカス・ウォーズ」
【著者名】ロラン・オプマン 作 ルノー・ロッシュ 画 原正人 翻訳 河原一久 監修 【定価】4,620円(税込) 【ISBNコード】978-4-87376-491-7 【判型・頁数】A4判/208頁/書籍 【刊行年月】2024年5月