「それに比べて私ったら…」哲学者が教える劣等感を成長の原動力にするためのたった一つの心の習慣
劣等感から解放されるにはどうすればいいのだろうか。哲学者の小川仁志さんは「劣等感には“悪い劣等感”と“良い劣等感”がある。劣等感を他者との競争に向けず、自分の理想に近づけるために生かそう」という――。 【マンガ】もうひとりの自分が私に言い続ける… ※本稿は、さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)の一部を再編集したものです。 ■「私みたいに仕事やめたいの?」
■もうひとりの自分が私に言い続ける…
■“悪い劣等感”と“良い劣等感” 【編集部】他人と自分を比べて劣等感に苦しむこと、ありますよね。 【小川】私たちが劣等感を抱くのは、人間には自分がよりよくありたいと思う「優越性の追求」の欲求があるからです。けれど、劣等感は誰しも抱くものであり、むしろ成長の原動力になると肯定的に捉えたのが、心理学者のアドラーです。もともと内科医だった彼は、自分の体の弱さをバネに舞台で活躍するサーカス芸人たちを診察するなかで、劣等感こそが人を成長させるカギだと気づいた。分かりやすく言えば、他者との比較で生まれる“悪い劣等感”と、自分の理想と今の自分を比較し、成長のバネとなる“良い劣等感”があると考えたのです。 【編集部】他人でなく理想の自分と比べれば、“良い劣等感”になるんですか? 【小川】そうです。私たちはつい他者と比べ、どう思われているかを気にしてしまう。でも、自分の評価を他者の承認に委ねていては、満たされず苦しむだけです。重要なのは、人ではなく自分がどうありたいか。自分の理想を目指して努力すれば、おのずと他者は認めるようになるはずです。 さらに言えば、自分の課題は自分にしか意味がなく、自分にしか解決できません。同時にリンの言うように、他人の心配や不安はその人の課題であって、自分が克服すべき課題ではない。アドラーはそれを「課題の分離」と呼び、割り切ることで前に進めると説いたのです。 ■単なるねたみに終わらせない… 【編集部】今回、ミルとヤスミはまず「劣等感の原因」を考えて自分の理想を具体化しています。 【小川】いい考え方ですね。ただ他者をまねしたいだけなのか、自分の理想と現実とのギャップから来る劣等感なのかを見極めることで、課題が見えてきます。たとえ劣等感を抱いてもその段階で終わらせず、理想の自分と比較する段階まで高めれば、単なるねたみでは終わらないと思います。 【編集部】同時に2人は、「自分は他人と違うから」と言い訳していることにも気づきました。 【小川】いわば他者と比較する“悪い劣等感”をもとに言い訳をして、思考をストップしている状況ですね。そうすれば、勇気を出して自分と向き合ったり、理想と闘ったりする必要がなくなりますから。それはラクですが逃げとも言える。そんなときこそ、自分を制限する周りの環境や条件を外して考え、理想を突き詰めるといいでしょう。