【安田記念】ロマンチックウォリアーが見せた圧倒的な「格の違い」 日本馬〝敗北〟が持つ意味
[GⅠ安田記念=2024年6月2日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝1600メートル] 【写真】〝全力〟のガッツポーズが飛び出したシャム調教師 2日、東京競馬場で行われたGⅠ第74回安田記念(芝1600メートル)は、香港からの遠征馬ロマンチックウォリアー(セン6・シャム厩舎)が1番人気に応えてV。GⅠ8勝目を手にした。当競走の香港調教馬の勝利は18年ぶり。勝ち時計は1分32秒3(稍重)。アウェーをはね返しての戴冠は見事だったが、実際は着差=半馬身どころではない…圧倒的な格の違いを見せつけた見下ろしの一戦だった。 雨で水分を含んだ稍重馬場、そして下馬評通りドーブネ&ウインカーネリアンが淡々と馬群を引っ張る流れで5ハロン通過は58秒4。馬場を考慮に入れてもやや緩めの展開で、ラップ上では先行型のロマンチックウォリアーにとっては楽な競馬に映ったが…。 〝実情〟は横山典の駆るステラヴェローチェに直線半ばまで終始外からフタをされる状況。鞍上マクドナルドも「確実に外からの圧力は感じていました」と明かすように道中の日本馬による包囲網はかなり強烈だった。対して2着ナミュール、3着ソウルラッシュの道中は直線入り口で楽に進路を確保していたようにスムーズそのもの。形勢は香港のチャンピオンホースにとって圧倒的不利だったが、それでも…。 「あと2ハロンということで数歩待ったと記憶しています。それ以上に耐えていたらチャンスを逃してしまう感じでした」(マクドナルド)と振り返るように、残り2ハロン地点で〝フタ〟を押しのけるように抜け出し、ぐんぐん加速。集団を引き離した。この事実からも不利をものともしない圧倒的な実力差があったと言わざるを得ないだろう。 さらに、その実力差を際立たせたのは鞍上の道中の回顧だ。「レース展開としては完璧だったと思います。当初のプランでは中団より前に行こうということで大変いいスタートを切ることができました。位置取りも大変良く、快適にどんどん切り抜けていたと考えています」 冒頭のコメントと矛盾するようだが、圧力を受けつつも「理想の展開だった」と振り返っている。相棒がアウェーのプレッシャーをはね返せることを確信していたからこその表現と言える。ゴール前では日本馬2頭が併せ馬で差を詰めてきたが、〝王者〟の脚色には、まだ余裕があった。 現在の香港競馬界はロマンチックウォリアー以外にもゴールデンシックスティ、カリフォルニアスパングルら多くの強豪を擁しており、選手層は充実一途。香港で行われる国際競走では分厚い実績を残している日本勢だが、互角かそれ以上の力関係を見せつけられた今回の〝敗北〟が持つ意味は大きい。香港馬と日本馬の戦力分析をやり直す時期に来ているのかもしれない。
権藤 時大