ウクライナ侵攻で火薬が不足、歴史的な円安拍車…原料を輸入に頼る花火に暗雲 どうなる? 夏の風物詩 花火大会継続へ知恵絞る関係者の工夫と不安
長引く物価高が、夏の風物詩ともいえる花火大会に影を落としている。歴史的な円安のほか、ロシアのウクライナ侵攻による火薬原料不足が影響しており、花火製造業者は「新型コロナウイルス禍が終わったかと思えば、今度は物価高」と頭を抱える。鹿児島県内では花火観覧料の値上げなど、対策に追われている。 【写真】花火大会に向け、打ち上げの準備を進める花火師=15日、南さつま市(太洋花火提供)
「全てが高い。価格転嫁をお願いするしかない」。鹿児島市で花火製造を手がける太洋花火の原口正悟営業部長(57)は嘆く。コロナ禍では大会の中止が相次いだ。やっと花火を打ち上げられるという喜びの一方で、常に頭をよぎるのが原材料費の高騰だ。 ここ3年ほどで、尺玉を包むクラフト紙や化学薬品などの原材料が高騰し、打ち上げ花火1玉の製造コストは3割以上増えた。「小さい尺玉に変えて打ち上げ数を増やすなど、限られた予算で楽しんでもらうのが腕の見せどころ」と原口部長。プログラムや予算について、毎日のように各地の主催者と打ち合わせを続ける。 花火製造業者などでつくる日本煙火協会(東京)によると、塩化カリウムなど火薬原料の多くは輸入品だ。円安で卸値が上がったほか、ウクライナ侵攻により砲弾用として火薬が流れているとみられ、供給の不安定さも高騰を招く一因となっているという。 24日に鹿児島市で開催される「かごしま錦江湾サマーナイト大花火大会」では、有料観覧席の種類を増やし例年通り1万5000発を予定する。実行委員の瀬戸口勇介さん(36)=同市観光振興課=によると、昨年まで2種類だった有料席を今年は8種類に拡大。指定席の区画を細かく区切り、見やすさにより料金を変えた。
瀬戸口さんは「花火だけではなく警備員の人件費も上がり厳しい状況。打ち上げ数を減らすのは簡単だが、この日を楽しみにしている人のためにもできる限り工夫したい」と力を込める。悩みはどこも一緒のようで、7月に終わった志布志市の「志布志みなとまつり」の担当者も「今年は協賛金が多く同規模で実施できたが、来年はどうなるのか」とこぼした。 地域の支えで開催できた大会もある。8月11日に指宿市で開かれた「かいもん夏祭り」では、例年通り約3000発の花火がフィナーレを飾り観客を魅了した。 運営費は市などの負担金のほか、企業や個人の協賛金で賄ってきた。ただ今年は、通常の予算では2000発程度が限界。開催ギリギリまで声をかけ続けたところ、「続けてほしい」「地域に必要」などと善意が集まった。担当者は「ありがたかったが、今後は祭りの在り方や存続も含め考えていきたい」と話した。 「一瞬の輝きのため大量の火薬を使う花火はある意味もったいない。でも、そのような世の中に感謝したい」と原口部長。夜空を彩る大輪は、平和の象徴ともいえる。持続可能な花火大会へ向け、関係者の模索は続きそうだ。
南日本新聞 | 鹿児島
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