半導体産業復権へ活躍の場広がる、フロロメカニック「真空ピンセット」のこだわり
フロロメカニック(東京都江戸川区、加藤孝弘社長)は、半導体シリコンウエハーを吸着して運搬する真空ピンセットや、その真空源となる小型高圧真空ポンプなどの開発・製造・販売を手がける。同社は真空ピンセットを開発・発売した1983年以来、日本の半導体産業の隆盛を見守ってきた。「『フロロじゃないと使えない』と言ってくれる技術者も多い」(高橋清会長)。半導体の進化に合わせて技術を磨き、顧客の声に応え続ける。 同社は1938年にエボナイト(硬質ゴム)製万年筆の加工業として創業。培った樹脂切削技術は精密部品加工に応用し、現在の主力事業にも生きている。 中でも真空ピンセットの先端に取り付ける吸着チップは豊富な製品ラインアップを持つ。直近で需要が旺盛なのは300マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の厚さのシリコンウエハーを運搬できる導電性ポーラスチップ。チップ上に複数個存在する直径0・8ミリ―0・9ミリメートルの微細な穴により、薄いウエハーでも応力を軽減して吸着・離脱ができる。 真空ピンセット・吸着チップともに、自社製の金型による樹脂成形部品で構成。金属を極力使っておらず金属汚染対策になる。祖業の万年筆を模した太さと握り心地の良さ、人さし指で押す真空状態のスイッチの軽さなど使い勝手にもこだわる。 真空源となる小型高圧真空ポンプもほぼ樹脂製。密閉スペースに設置したゴム製のダイヤフラム(膜)により多段階で減圧する構造のため小型でも高真空圧を得られる。吸気・排気部にはHEPAフィルターを装着しており、クリーンルームで使用可能。「一番の特徴は壊れないこと。一度買うと10―20年は使える」(加藤社長)と言い、既存の装置に組み込む目的で購入する顧客も多いという。 ラピダス(東京都千代田区)など日本の半導体産業が復権を目指す今、フロロメカニックの活躍の場は広がる。「良い影響を期待する」(加藤社長)と技術にさらに磨きをかける。