ファウスト・ピナレロ氏インタビュー 「ピナレロがピナレロである理由」
テーラーでありたい
安井:今回フルモデルチェンジとなったドグマFですが、マグネシウムのドグマ→ドグマ60。1のときや、ドグマ65。1→ドグマF8のときのような激変はしなくなりました。だんだん変化が小さくなってきた印象ですが、ロードバイクの進化は頭打ちになってきているのでしょうか? ファウスト:新型のドグマFは先代と見た目は大きく変わっていないように見えるかもしれませんが、中身は大きく変化しているんです。素材も変えていますし、ヘッドチューブやBB周りなど、形状を大きく変えている部分もたくさんあります。タイヤクリアランスも変えました。ハンドルも完全専用の新設計とし、形状も「もっともいいハンドルとは何か? 」を考え、安全性と空力を重視して設計しました。細かい部分を含め、多くのところを変えましたが、ライダーにとって非常に重要なジオメトリだけは変えていません。 安井:今まで同様、新型もたくさんのフレームサイズがあり、専用ハンドルのサイズバリエーションも多く用意されています。空力のためにハンドル幅は360mm一択というようなメーカーも増えていますが、フレームとハンドルのサイズバリエーションにこだわる理由は? ファウスト:スチールフレームの時代は、バイクメーカーはテーラー(仕立て屋)のようなものだと言われたんです。しかし現在は金型が必要なカーボンフレームが主流となり、ジオメトリ―の調整がしにくくなりましたね。それでもできるだけテーラーであるために、11種類ものフレームサイズを設け、ハンドルバーにもたくさんのサイズを用意しているんです。カーボン時代になった今でも、ピナレロは「乗り手にとってのテーラー」でありたいと思っているんです。下位グレードでも10サイズほどを揃えているメーカーはピナレロくらいでしょう。 安井:カラーが豊富であることも特徴ですね。 ファウスト:そう。ジオメトリだけでなく、見た目においてもテーラーであるために、カラーを多く設定していますし、「マイウェイ」というカラーオーダーシステムも用意しています。マイウェイの人気がすごくてお客さんをお待たせしてしまっていましたが、現在イタリア本社の敷地内に新しい塗装工場を建設しているところです。これで供給が安定するでしょう。塗装も職人技が必要なので、海外の塗装工場に丸投げというわけにはいかないんですよ。