25歳で倒産寸前の家業へ 人気商品「もちはだ」3代目社長の改革秘話と大きな決断
売上1億円の事業を撤退した理由
鷲尾:今年2月29日にワシオ史上初の経営方針発表を通して、社員には大手ECモールからの撤退を伝え、4月に辞めてますね。売り上げは全体の20%位はありますね。ですが、結局利益の視点で見た時に全く儲かっていなかったというのと、変わり続けるプラットフォームに対応していく難しさがありました。そもそもロングテール商品が推奨されていて、ラインナップを変えて売れるような商品なら良いのですが、うちは技術力をベースにした定番商品を出品していて、かつ秋冬に売れる季節物なので大手ECモール向きではないんですよ。 ECモールでは在庫を切らすと検索順位が下がりますが、春夏なんて在庫0にしたいじゃないですか。なのにECモール担当者は自分たちの売り上げ目標を達成するため在庫は必要で減らせない、でも会社としては在庫を減らしてくださいというタスクが叶えられない状況が続き、非効率な仕事が増えていたので、辞めた方が良いという判断です。 しかもお客様は「もちはだ」と指名検索してくれるので、自社サイトで売り出せばそちらに来てくれるだろうという見込みもありました。 ただ1億円ほぼ落とした売り上げを取り返さなきゃいけない状況で、そんな目標を誰も背負いたくないじゃないですか。撤退を決めたのは僕なんで、僕が背負わなきゃいけなかったというのが反省点としてあり、9月頃からは自分が責任者として、その数字を見ていくことにしました。もっと早く気づけば良かったです。 ◾️教えて! 瀬戸内VC 「MVVって必要ですか?」 鷲尾:お二人への質問は「果たしてMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は必要なのか」ということです。スタートアップやアトツギベンチャーで会社を経営していくためにまず必要なものだみたいな風潮が果たしてどうなのか?と感じています。 藤田:本質ではないと理解した上で、結局は有効活用すれば良いかなと感じています。個人でもMVVは活用できるとは思います。僕も「10年後の未来、どうしたいか」という問いが嫌いで、人生は道草を楽しまないといけないと思うんです。だけど一旦、今目指す場所も必要だと思うのでMVVを設定して、そこに身を委ねるというような使い方は有りだと考えています。 山田:未来に向けてミッションやビジョンをツールとして掲げることで、仲間を増やしやすかったり、チャンスを得やすかったりするとは思います。例えば、僕らが「スタートアップを10年後に100社、瀬戸内に創出する」というミッションを掲げる方が味方は増えるし、わかりやすいじゃないですか。こうやって言葉を尽くさないと伝わらない層に届けるために、MVVなどを置くのは、今の自分をすごく豊かにすると思うんですよね。ただ失うものも結構あると思うので、本当に仲間にしたかった人が集まらないのであれば、そういうツールは使わずに伝えた方が良いと思います。 藤田:組織を大きくしていくのであれば、やはりMVVは必要なフェーズはあるかなと思います。 防寒衣料に特化したメーカーという祖業は変えずに、時代に合わせて組織や売り方を変えていく。その道のりは決して平坦なものではないが、製造現場で培われた技術を守り、その価値を磨き、どうすれば世の中へと伝えられるかという本質に真摯に向き合う。その危機感を背景にもつ熱い思いが、暖かな製品とともに、人々の心の温度も上げていくのだろう。
Setouchi Startup Flag(セトフラ)