【新連載スタート!】元フジテレビ渡邊渚アナ「私がPTSDであることを世間に公表した理由をお話しします」
少し前に、大学時代にお世話になった先輩が自ら命を絶ったニュースをネットで見て、あまりに心が痛み涙が止まらず、私も追随しそうになりました。人としての尊厳を傷つけられ、貶められ、どれだけの絶望を味わったか。生きているのが正解と思えない真っ暗な日々の中で自死を選ぶ過程を想像して、この文章を書いている今も動悸がしてきます。 振り返ると、私もPTSDになったばかりの頃は井戸に落とされたような感覚でした。気を抜いたら溺れ死にそうで、でもどれだけもがいても上に這い上がるきっかけもなく、永遠と真っ暗で冷たくて、声を上げても誰にも届かない、何の希望もない状態。もう頑張れない。生きている方が辛い。 そんな時、信頼できる医師や看護師さん、ソーシャルワーカーさんが私の落ちた井戸にロープを投げてくれました。友人や家族が光をくれて、「こっちだよー!戻っておいでー!」とみんなが私を井戸の底から引っ張り上げてくれました。私は本当に幸運なことに、必要な医療をしっかり受けられ、「持続エクスポージャー」という認知行動療法をやり、今ここまで回復できましたが、精神的な病に日本の社会は優しくありません。
「これからの人生は頑張って生きていきます」
メンタルヘルスの問題は、「気の持ちよう」「心が弱い」などと言って軽んじる傾向が強いです。ですが、みなさんがもし骨折したら、病院に行きますよね。「気の持ちようだ、我慢しろ」なんて言いませんよね? それと同じ。心が折れそうになったら、病院に行って治療をしなければならないのです。それが恥ずかしいことだと思う必要は全くありません。当然のことなのですから。 私はその当然を日本社会の当たり前にしたいのです。だから自分がPTSD であることも公表しました。最近は、精神疾患への理解の普及活動や、大学の心理学部の学生に向けて講義をする仕事を予定しています。「心療内科は入りづらい」という心理的な不安を解消させることや、「予約が取りづらい」「臨床心理士が少ない」と言った現状を変えるために、これからの未来を担う学生に向けて自分の体験を話しています。 私がたまたま幸運だったから回復できたのではなく、どんな人も心が辛い時に適切な医療を受けられ、優しさに包まれて健康な日々を送れる未来を作りたい。 これを、去年の指も足も上手く動かず死んだほうがマシだと思っていた状況から復活できた自分に与えられた使命だと思っています。 そして、辛いことがあった分、これからの人生は幸せを欲張って生きていきます! そんな決意表明で今回は終わりにします。ではまた。 ※渡邊渚アナの新連載エッセイ「ひたむきに咲く」は「NEWSポストセブン」より隔週で配信していきます。 【プロフィール】 渡邊渚(わたなべ・なぎさ)/1997年生まれ、新潟県出身。2020年に慶大卒業後、フジテレビ入社。『めざましテレビ』『もしもツアーズ』など人気番組を担当するも、2023年に体調不良で休業。2024年8月末で同局を退社した。今後はフリーで活動していく。11月11日(月)より「NEWSポストセブン」にて連載を開始。